恋をするから 愛をくれ

@mirutamina

お気に入りのキラキラのヒールに少し奮発した青のスカート、そしてこの前可愛いと褒められた白いニットを着て駅に向かう。



天気はまだ11時だというのにすこぶる悪い灰色をしている。

巻いた髪が取れてしまうかもしれないと気にする私は可愛い。


送ったメッセージにはまだ既読はついていなかった。

次にやりとりが動くのは1時間後だろうか。



目の端に蜘蛛の巣で蝶が羽を休めていたのが見えた。






2時間が過ぎようとしていた。

最初に約束してたはずの時間から、だ。


もう慣れてしまっていたし、私にはこの扱いに対して怒る勇気も資格も私はもっていない。


「今日どうする?」


流石にランチって時間でもなくなってきたから、私もやることがあるから、と自分に言い訳をしてメッセージを送る。


まさか忘れてなんてね


5分後のポコンと大きな間抜けな音でマナーモードを切っていたことを思い出し、あわててスイッチを切り替える。


「どうしよっか」


なんだそれ 思わずため息が出る。

すっかり冷めてしまったコーヒーを一気に流し込む。


「ランチは?」


「もうお店やってないよねー どうしよ」


あなたのせいじゃんとまた心の中で悪態をつく。 

食器を片付けてトイレに向かう途中、


「ランチタイム以外なら?」


と送った瞬間に電話が鳴った。


「もしもーし」


喉がキュッとなり自分の中での違和感のない程度の可愛い声を出す。


「もしもし?」


「ねぇーつかれたー」


「お仕事?おつかれさま」


「ほんとだよー。どうしよっか、お店。てかどこにいるの?」


「池袋。昨日そこらへんのお店の話してたから」


「あー、今、上野にいるんだよね」


「そうなんだ、どうしよ」


あなたの職場、新宿だった気がしますけど。


「そしたら池袋、むかうね。ちょっとまってて」


「待ってる」


池袋、きてくれるんだ。優しい。

と口角が上がりかけて思う。


いつまで私は待つのだろう


さっきまでいた席には向かい合って手を繋いでる高校生のカップルが座っている。


「ばかだな」


いつまでこんなことをするのだろう

いつまで続くのだろう

いつまでつづけているのだろう





初めて会ったのは池袋の改札だった。

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