お姉ちゃん ⑪

「…………さあ?」





 前に足を運ぶことが、必ずしも前に進むとは限らない。


 これで何十回目だろう。


「……もう、立てないよ」

 私は膝をついて、地面に息を吐きつける。

「だめ。言ったでしょ。もう一度立ち上がって。何度でも何度でも立ち上がって」

 無理だという素振りを見せても、陽愛ひよりは顔色を変えずに優しい言い方で容赦なく私を起こす。

「おお、お、おおお……」

 呼吸が辛い。足が動かない。それでも、冷たくなってきた体が、熱くなる。後ろから木枯らしが吹くと、体が勝手に前へと進み出す。

 息を吸うとほんの少し湿っぽい空気に肺がヒューヒュー音を立て、涙は目尻を伝って後ろに流れた。もうすぐ最初の雪が降る。


 陽愛がお母さんみたいに微笑んだ。

「待ってるね。お姉ちゃん」

 たとえ、満足げな声が後ろから聞こえてきても、私は立ち止まれなかった。


                                      〈了〉

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お姉ちゃん Massu @Ren_Sato

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