お姉ちゃん ⑪
「…………さあ?」
前に足を運ぶことが、必ずしも前に進むとは限らない。
これで何十回目だろう。
「……もう、立てないよ」
私は膝をついて、地面に息を吐きつける。
「だめ。言ったでしょ。もう一度立ち上がって。何度でも何度でも立ち上がって」
無理だという素振りを見せても、
「おお、お、おおお……」
呼吸が辛い。足が動かない。それでも、冷たくなってきた体が、熱くなる。後ろから木枯らしが吹くと、体が勝手に前へと進み出す。
息を吸うとほんの少し湿っぽい空気に肺がヒューヒュー音を立て、涙は目尻を伝って後ろに流れた。もうすぐ最初の雪が降る。
陽愛がお母さんみたいに微笑んだ。
「待ってるね。お姉ちゃん」
たとえ、満足げな声が後ろから聞こえてきても、私は立ち止まれなかった。
〈了〉
お姉ちゃん Massu @Ren_Sato
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます