第55話
「……で、そこで何やってるんだ?お前らは」
「「………ハイ」」
「僕は悪くないもーん」
俺が訓練場での一試合を終わらせ、
訓練場から出て行こうとすると先程の戦いの凄さの余韻に浸っていて逃げ遅れた彼女たちは見つけられてしまった。
「家に居ろって言ったよな?」
「言ってたの」
「言ってた…」
「僕も聞いたよ〜」
噛み締めるように言う。
「なんで…言うこと聞いてくれねぇんだよぉ…」
「わぁおスゴイ力の入れ具合」
「力強いの」
「…感情が分かりやすい」
「誰のせいだ!!」
てか、さっきからルアが邪魔してくる!!
…一回落ち着こう。戦いの後だからか気が立っているな…
「そちらの方たちが君の仲間?」
「あぁ、ちなみにまだ増える予定だぞ」
「へぇ…ケイトってハーレム系主人公だったりする?」
「おいどっからその知識出て来てんだよ」
こっちの世界でハーレム主人公なんてワードを聞くことになるなんて思ってもなかった。
いや、聞きたくなかった。
「今の時代常識だよ?」
「おうちょっと流行らした奴ぶっ飛ばしてくるわ」
ガタッと椅子を鳴らして立つフリをする。
…こんな軽口を叩き合うなんて久しぶりだ。
…友達ZEROスタートの俺にそれほどの関係が生まれたことには奇跡しか感じない。
相手は勿論、ローウェイだ。
昨日の敵は明日の友なんて言うだろ?
…そう言うことだ。
「俺のクランも面白いメンバーが沢山いるけどさ…まさかカガクレさんが居るなんて思いもしないよ」
カガクレはやはり名匠と言われているだけあってこちらの界隈からしてもかなりの有名人だ。
「敵になる奴にわざわざ武器を送るなんてバカらしい。武器はやらんぞ?」
「お〜…辛辣辛辣」
塩対応されたって言うのに楽しそうだぞ?こいつ。
そんな紆余曲折があってこのローウェイとsevens diaryのメンバーとの顔合わせが終わった。
…あの後ローウェイは仲間に内緒でここで俺と戦ったらしいのだが、それがバレて仲間に連行されると言う形でお開きになったのだが。
「…すみませぇん…」
疲れ切った表情のどこぞの受付嬢がやってきた。
「ん?…マリーさんじゃないですか」
(((この子がマリー…)))
「あの、その、ギルドマスターがお呼び、です…」
憔悴した様子のマリーさん。
「…会いたくないと言ったら?」
「『殺す気で連れてこい』ってぇ〜…」
気の毒である。
「はぁ…どっちみち会うことにはなってただろうし、行くか」
「お、いきなり良い思い切りじゃの」
「お兄さん吹っ切れたんだ」
「…ケイト…がんばれ…」
正直一番ラシュカに癒されてるわ。
「で、では案内しますね…」
マリーさん…今度労われてくれ…
そうしてマリーさんに執務室まで連れられた。
コンコン…
「ザックさん、例の方たちを連れてきました…」
『入れろ!!!!!!』
「…では私はここまでで失礼します…」
「え?お姉さん来てくれないの?」
ラシュカの上目遣いがマリーさんに突き刺さる!
「ご、ごめんなさいね…あの威圧感は私には早すぎたのよ…」
悲壮感をドロドロと漂わせて行きたくないと必死にアピールしてくる。
…流石に可哀想だ。
「そんな人と合うのは少し心労がかかる気がしますが…まぁマリーさんはここまでで大丈夫です。お疲れ様でした…」
「は、はい!ありがとうございました!では私はこれで!」
マリーさん俺が発言して2秒も経たないうちに一階に脱兎の如く逃げてったぞ…
…憂鬱だな。
おい、ルアよ。そんなおもちゃが逃げたみたいな目をするな。
気が重いが、そろそろ入らなければな…
ガチャリとドアの部が音を立てる。
「やっと来たか…」
そう言って部屋で待っていたのは…
まさに巨人。
4メートルはゆうに超えている歴戦の冒険者の風格を漂わせる厳つい男だった。
「ん?どこかで見覚えが…まぁ、いいか。よぉ、『神話殺し』の…ケイトと…女たちか。まぁ、女子供には興味がねぇ。ケイト。お前に用がある」
何か危ない仕事をしてそうな低めのドスのきいた声だなぁ…「女子供には興味がねぇ」って聞いてるだけだと戦闘狂でテロリスト的なやべーやつ判定しちゃいそうだわ。
「なんで僕たちには興味がねぇの?おじさんは」
口調を似てないながら真似をしてルアが質問をする。
それを鬱陶しく思っているのか冷たく返す。
「俺はケイトとやらに興味があるんだ。勝手に侍ってる能無しの奴らに興味なんか湧かねーよ」
は?見る目ないのかこいつは?このギルドマスターとか言うやつが俺は大っ嫌いだ。
今なった。
少し…というか、かなりむかっと来たから俺はみんなに指示を出す。
「ルアは…その"強欲"でギルマスの目を奪え。ラシュカはギルマスに結界を張ってその中に浄化魔法を最大出力でブッ込め。…カガクレは待っててくれ」
「「「了解」」」
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俺はあいつがあのガキどもに何を支持したのかが理解出来なかった。
しかしひとつだけ分かった…いや理解はしていないが聞き捨てならないことを聞いた。
「おい、お前。今"カガクレ"とかほざきやがったな?」
カガクレとは正体不明の現時代最高の鍛治師と言われるほどの腕の持ち主で彼か彼女かも分からない。販売方法も素顔がバレないよう異質な形態で鍛治師の界隈どころか王様貴族の中でも知らない者は少ないと言われるほどの知名度とシークレット性。
そんな秘密を抱えた鍛治師があんなひょろっちい女だと?
そんな俺の質問、というより確認は答えられることはなかった。
…なぜなら僕っ子のガキの重心が僅かに動く感覚がしたからだ。
その動きの中で瞬間的に放たれたもの凄い勢いの殺意はこの世の深淵の闇を集めたようにドス黒く、思わず身震いしてしまう。こんな経験は初めてだ。
本能が『逃げろ!!』と叫び、思わず手を前に出してしまう。
そんな体験は初めてだ。
こんな女のガキに恐怖している?
ふざけるな。今までの冒険の方が何倍も辛いし、怖い筈だ。
その僕っ子のガキは既に動きを終えていたようだ。
…終えていた?動きが全く見えなかった。
何をした?
気づけばあのガキのことしか頭になかった。
だからだったのか、俺の手にナイフが刺さっていたことに遅れていた。
認識した瞬間に現れる痛み。
それを追い越してしまうほどの衝撃。
気づけば彼女に俺は目を奪われていた。
この時に俺は気付けばよかったと後悔する。
俺のまわりに既に結界が張られていたことなど、全く気付かなかった。
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みんなは瞬時に俺の意図を汲んでくれた。
俺の推測からするとルアの"強欲"はただものを欲するだけではなくそれを可能な限り奪うことができると思ったのだ。
たとえそれが物理的なモノじゃなくても。
そこで考えたのがラシュカの魔法の邪魔をさせない為に少し時間を稼いでもらうべく、
「目を奪う」ことにさせた。
若干の賭けはあったし、失敗してもカガクレの名前で動揺を誘えるかもという2段階の形態で試したのだが…
結果は大成功だった。
しかし、彼女の行動には少し不可解な点がある。
それは、彼女は武器を持っていなかったのだ。
それなのに何故彼女は武器を持っていたのか…それは今後分かることだ。
そこからは流れるようにことが進んだ。
ラシュカが魔法を最大火力で詠唱し、それを圧縮させた。もちろん暴行とかになると面倒なので、一番傷を与えず、それでいて"ある意味ダメージになるもの"ということで気を抜いたまま食らったら腰が抜けるほどの快楽を与える【浄化】を使う。
通常の魔力ですらアレだったのに最大火力にでもなると…考えただけで恐ろしい。
魔力は球の形となり、ギルマスに近づく。
ギルマスに十分近づいたところで
ラシュカの中からも外からも干渉できない特殊な結界を張って結界の中だけで浄化を発動させる。これなら浄化は結界内の出来事として外側に干渉することはないだろう。
それを実行した瞬間…
「んぁああん♡」
と厳つい男がその姿に合ったドスの効いた声で厳つい男に似合わない喘ぎ声を出してピクピクとなっていた。
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来週はこの作品の更新はないですが、
その分新作を出していくかも…です。
https://kakuyomu.jp/works/16816700427020222174/episodes/16816700427020424366
昔出していたやつを再び出しました。
ちゃんとR15だと思います。(予定から大幅にズレているとかは言えない)
プロットは元々性描写は無しの方向で進めてました()
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