オルクセン軍野戦調理教範③ 肉の下処理とミートローフ

<肉の下処理>


 精肉は、通常は師団の精肉中隊より供給される。

 これは獣医の検査も受け、適切に処理されたものだ。ヴルストやハムのような加工品についても同様である。

 ここでは戦地において臨機に屠畜する場合及び、精肉を下処理するために必要な手順を簡易に記す。



 まず、屠畜の手間と得られる肉量からの効率は、牛、豚、羊、鶏の順によい。豚は牛の二倍の手間がかかり、羊は八倍の手間がかかる。それでいて得られる肉の量は、豚の場合には牛の約三〇パーセントであり、羊に至っては約八パーセントでしかない。

 一方、飼育期間や餌量といった効率はこれと完全に逆転し、鶏、羊、豚、牛の順になる。つまり、屠畜効率のよい畜肉類と調達のしやすさは反比例してしまうということだ(むろん、地域や気候、文化背景も影響する)。

 また豚は確かに牛に対して解体効率で劣るものの、ヴルストやハムなどの加工には最適である。鶏からは卵を得ることもできる。

 またあるいは、牛であるからといって安易に乳牛を畜肉にしてはならない。乳牛は出征地では貴重な牛乳を提供してくれるからである。

 畜肉を組織的に調達し、供給するには、小規模な部隊による臨機な対処といえども、このような背景事情を理解しておく必要がある。



 精肉を処理する場合は、清涼な水と作業場所を確保できる家屋内であることが望ましい。

 新鮮な肉は、屠殺後約一二時間、防虫処理済ガーゼ袋など、清潔を保てる方法で吊るしておくこと。

 生肉を数日間保存する場合は、屠殺後一日は太陽に当てて表面を乾燥させ、その後日陰に吊るして空気に触れさせなければならない。短期間保存する場合は、ヴィネガーに浸した布に包んでおくとよい。

 調理やローストする前に、すべての生肉は十分に叩き、骨、皮、筋を取り除き、洗浄しなければならない。完全に新鮮な肉であっても、屠殺後すぐに叩き(約一五分以内に!)、筋を取り除いた後、ナイフで切れば、下処理ができる。

 狩猟獣肉を含む生肉の消費は、頻繁に発生する寄生虫や食中毒の防止のため、絶対に避けねばならず、厳禁である(もちろん、大鷲族と巨狼族は例外だ)。

 軍の精肉部隊は、家畜が適切に調達される限り、前線に精肉を供給できるだろう。

 また野戦炊事車にストックされる牛缶詰は、シチューやスープ類のベース足り得る。適切に併用することが肝要だ。

 


<特別なメニューにふさわしいミートローフ>

 これは調理体制に余裕のある場合の週末、あるいは陸軍記念日や冬至祭にぴったりの、特別料理である。

 まずミンチマシーンにより、牛及び豚で挽き肉を用意する。

 これに微塵切りにした野菜類、パン粉もしくは白パンを細かくしたもの、牛乳、塩、コショウ、ナツメグを加え、粘りが出るまでしっかりと捏ねる。

 たくさんの種類の野菜を使えば見た目もカラフルとなるだろう。

 そして型につめる。より余裕がある際には、中心部に茹で卵を仕込んでもよい。

 予熱したロースト釜で焼き上げれば、どのよう気難しい将軍にさえ提供可能な、立派な特別メニューの出来上がりだ!

 ソースには、グレイビーソースかデミグラスソースが相応しい。粒マスタードも旨味を引き立ててくれる。

 添え物には、キュウリのピクルスもしくはジャガイモがよいだろう。

 この料理には手間がかかる。部隊派遣の炊事助手を、肉の下処理や野菜の皮剥きなどに巧く使うこと。きっと彼らも肉の焼き上がる匂いや、ソースの芳醇な香りに誘われ、積極的に協力するに違いない!


 

(続) 

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