第29話 おおいなる幻影⑧ アルトリア攻囲戦 下編②

 信じられないことだが。

 エルフィンド陸軍アルトカレ軍は、オルクセン軍によるアルトリア市街地砲撃開始よりなお三週間にわたって持久している。

 ダリエンド・マルリアン大将による指導と、彼女を補佐した幕僚及び軍幹部たち、何よりその配下にあった兵及び市民たちが、どれほど継戦に努力を傾けたか。

 マルリアン大将は、市中にまで砲撃を受けるようになると、まず国民義勇兵のうちアルトリア市民出身者から、二八〇〇名の特別消火隊を作った。

 これは通常のアルトリア市各区の消防隊とは別の存在で、予備及び急造の手動式ポンプとホース、長い柄の鳶口などを与えられて、激しい砲火に晒された地区が出ると駆け付け、消火と延焼防止に努めた。

 そうして軍の予備隊と軍政、軍令の中枢を、比較的砲撃の薄かった市東北部へと移し、指揮指導を継続した。

 市民たちも懸命だった。

 彼女たちは、毎日昼食時間になり、夜になると、オルクセン軍の活動が止まるのを利用し、傷者を救助し病院に収容して、瓦礫を片付け、死者を弔い、消火に努め、パンを作り、スープを煮た。

 食糧のうち、もっとも先行きが懸念されたのは肉類で、一一月二二日の前哨戦開始時、アルトリアには牛が一万八七五〇頭、羊が一四万六二五頭、備蓄畜肉用として存在していた。

 これを順に屠畜、精肉し、市民ひとり辺り一日一〇〇グラム、実際運用としては三日分にまとめて整理券と交換で配布するわけである。体力を温存しなければならない兵隊用にはもう少し多く、一日あたり一八〇グラム。

 計算上、これで籠城二か月分を想定していた。

 他に塩漬肉の類があったが、こちらは全兵士及び全市民の七五万に対し、五日分相当しかなかったので緊急時の予備としていた。

 ところが二九日の砲撃で中央畜肉市場及び同所の精肉保管庫に二八センチ砲弾が着弾し、これらの畜肉用獣が被害を受けてしまい、一挙に精肉に不足を来すようになった。

 受けて、アルトリアでは非情な策が採られている。

 軍用馬の解体である。

 軍獣医の検査のもと、まず八〇〇頭が屠畜され、市中に供された。

 エルフィンドにはもともと馬食の習慣はなく、むしろ馬は軍においても民間においても日常を支え得る相棒として大事にされ、神話伝承上に神馬とされる存在もいたことから、慈しみ、愛する対象だった。

 背に腹は代えられず、これを食べた。

 軍馬はアルトリアに六万頭はいたから、順に解体すれば一か月分以上にはなるだろうと計算された。

 このような流れのなか、牛乳及び乳製品の不足が深刻になった。

 どちらもエルフィンドの民には食卓に欠かせないような扱いだったから、この不足は市中物価の騰貴を招いた。平時の三倍以上になった。

 野菜は、根菜類を中心にして意外に保った。市中に農場も幾つかあったので、ここからの収穫と保存、消費が図られた。

 医薬品の欠乏も起きた。

 遅延戦闘以来、事前に誰も予測しえなかったほど死傷者が生じたため、まっさきに在庫が尽きたのは包帯で、これは市内から清潔な布類を供出してもらい補っている。

 エリクシエル剤は、一二月に入ってから尽きた。

 これに合わせて、重傷者治療用のエーテル麻酔薬の不足が深刻となり、末期には麻酔無しで外科手術が行われるようになった。

 実際のところ、両者に最低限の備蓄は残されていたのだが、これは軍用で、敵が攻勢発起した際、その防支戦闘用とされた。

 アルトリアに一日当たり降り注いだ砲弾は、おおむね一二〇〇発から一八〇〇発の重砲弾で、着弾の度にあちらで一名死亡、こちらで五名負傷といった被害が出た。

 オルクセン軍の砲撃規模にしては随分少ないようにも思えるが、この砲撃が三週間も継続したのだからたいへんな数になる。

 都市砲撃の開始前、末端兵站駅から車列を組んでいるのが観測された「小さな馬曳車両」とは、弾薬車がその正体であった。オルクセン軍の場合、対象砲の種類にもよるが、おおむね砲の前車と同じものを二両連結させたかたちで使っている。

 オルクセン軍が砲戦開始まで日を設けたのは、弾薬の前哨戦による消耗分の補充と攻城戦に備えた事前集積に努めていたからで、重砲一門あたり一〇〇〇発、攻城重砲一門あたり五〇〇発を集積した。

 おそろしいことに、これは格別多い数ではない。砲一門辺りに定められた、攻城戦の場合の定数通りだ。

 ―――それにしても。

 などとマルリアンは不審に思う。

 幾ら要塞に内包され軍が駐留しているとはいえ、これほど徹底した都市破壊をオルクセン軍の連中も、列商各国も、なんとも感じないのだろうか。

 確かに、軍が駐留している以上、文句の言いようもないが。

 彼女はそのあたりの機微について、一二月に入る前に知った。

 要塞と首都方面との連絡は、魔術通信による逓伝と、夜半になってから派出する小規模な兵とでどうにか保たれていたのだが、このかろうじて保たれていた通信手段により、海軍の連中が一一月半ばにオルクセン沿岸都市を砲撃し、赤子が死傷していたことを知らされたのだ。

 オルクセン側にしてみれば、こう言っては何だが、体のいい報復口実を得たことになる。

 また、エルフィンド軍が全土に発した「全壮年国民を国民義勇軍に編入する」という措置を受け、オルクセン側が「いったいこれは最早エルフィンド国内には無防備の都市など存在しないという意味なのか」という、国際赤星十字社を通じた問い合わせを行っていたことを。

 エルフィンド政府に対し、今後の攻撃には必ず事前に降伏勧告を行うから、国際慣例習慣上の無防備都市宣言を行い、軍隊を追い出し、都市ごと降伏しない限り、市民の巻き添えについては考慮しないと通告していたことを。

「なんという・・・ なんという戦争なのだ・・・」

 たしかに降伏勧告はあった。

 オルクセン国王の名義になっていて、受け入れられないようなら、極力市民を退去させてほしいとの一文もあった。

 当然というべきか、マルリアンとしては受諾できるものではなかったし、後者の条件もまた全市の士気維持の観点からいえば容易に考慮できるものではなかったから、拒絶していた。ほんの僅かばかり幾らかいた、居留外国人や病弱な者を脱出させただけだった。

 だがまさかそれが、想像以上に敵に対して口実を与えるものになっていたとは、思いもしなかった。

 つまり諸外国は、アルトリアがどれほど砲撃されようと「オルクセンは無制限報復に出てもおかしくないのに道徳に則った真似をする。立派だ」などと見ていたのだ。

 市街砲撃開始から一週間を過ぎた時点で、アルトカレ軍の遅滞防禦戦闘以来の累計死傷者は三万九〇〇〇名、アルトリア市民の死傷者は二万八〇〇〇名に達した。

 これ以上の籠城戦は危険だと判断したマルリアン大将は、本国に対し解囲戦のための援軍を要請した。

 要塞戦は、例えどうやってもいずれは守備側の不利となる。

 これは事前からはっきりとわかっていた。

 着任時の軍上層部との打ち合わせによれば、抵抗に抵抗を重ねたら首都方面軍から援兵を用意し、解囲攻勢をかけ、これに要塞側も呼応して、アルトカレ軍は脱出を図ることになっていた。

 その行動を起こすべきだと判断したのだ。

 これは三日後になって、首都方面の防衛を優先するという理由で却下された。代わりに別の答えが返ってきた。

「命令。アルトカレ軍はアルトリア要塞を固守し、一日でも長く持久せよ」



「ありがたいことだな。ありがたくて涙がでる」

 マルリアン大将には、いまひとつの不審があった。

 なぜか敵の砲撃は西部及び南部に集中していて、東部に対しては及び腰だったことだ。

 その傾向がはっきりとし、軍用地図を眺めたとき、彼女はその理由を瞬時に悟った。

 ―――鉄道だ。

 アルトリア東部市域には、南部からの鉄道線本線が入り、北部へと繋がっている。

 オルクセン軍はこれを欲しているのだと理解した。

 思えば、いままで奴らの行動はすべてそうだった、とも。

 理解するまで時間はかからなかった。エルフィンド軍とて、もはや軍隊輸送に鉄道は不可欠な存在であったからだ。

 そうして改めて軍用地図を眺めると、すべてに得心がいった。

 西北部の敵第二軍団にしても、東部の第七軍団にしても、もっと進出出来るのに北側へは砲で瞰制するばかりで延伸運動をやっていない。包囲戦開始時に、砲撃で一部を破壊しただけだ。よほど鉄道線を巻き込みたくないらしい。

「なるほど。なるほど、な・・・」

 彼女がその後の行動について着想を得、決意を固めたのは、この不審点が氷解したとき、そして兵及び市民への被害があまりにも膨大なものとなった一二月中旬である。

 ちょうど別の報告書も上がっており、それをじっくりと眺めた結果浮かんだ別構想も、彼女の頭のなかで融合し、ひとつの大きな方針となって、合流した。

 彼女は幕僚や軍幹部らの一部とその計画を具体的に検討、立案すると、明確な内容の命令文を幾つか書き上げ、実行責任者と見込んだ者にこれを手交、下令し、さらに幾らか彼女の考えをまとめた報告書を作り上げてから、司令部としていた北東部区会所の半地下ワイン貯蔵庫に一名の二等少将を呼んだ。

「第二四歩兵旅団長セレスディス・カランウェン、入ります」

「おう」

 まあ座れとソファを勧め、ワイン瓶を一本取り出した。グラスは最初から二つ用意させてあった。

「飲むだろう? 場所が場所だけに酒だけは不自由しない」

「は・・・」

 カランウェン少将は幾らか迷った様子を見せた。

 エルフ族に多い金髪碧眼。白エルフ族にしては眉根から目元にかけて力強さがあり、髪は短くし、前線から呼び戻したため多少戦塵にまみれてはいるが、制帽を斜めにした姿は伊達者の気配がある。

 マルリアンとは初対面というわけではなかった。遅滞戦闘をやった一隊、これと見込んで指揮をとらせたアルトカレ軍のなかでは熟練の少将で、白エルフ族の指揮官にしては柔軟な指揮をすると評価していた。もう一隊と比べれば多くの死傷者も出したが、これが彼女の隊が一度オルクセン軍を押し返し、二度戦闘をやったからだった。

 この少将が、オルクセン軍からの鹵獲品から双眼鏡を使っているのを見て、マルリアンは自身の部下を見る目が正しかったことを改めて実感したものだった。

 その後の前哨戦でも幾つか目に見えた活躍をし、とくに配下の兵に狙撃を多用させて、敵将校や兵を撃ち倒すことが多く、部隊感状を出したこともある。

「なんだ? 無理難題を吹っ掛けられるのかと警戒してるのか?」

「は、では頂きます」

 白エルフらしくないといえば己以上にらしくない上官の言葉に、カランウェンは破顔した。

「小官の陸軍大学校時代の戦術教官が、面白い方でしてね」

「うん?」

「無暗に酒を奢る将軍には、敵軍以上に注意しろ、と」

 マルリアンは目を丸くした。

「ふ、ふふふふふ! 面白い奴だな、そいつは本当に。いやはや卓見だ。お堅い軍学校教官でその様子じゃ出世はしとらんだろうが、会ってみたいな!」

「・・・それが―――」

 カランウェンは表情を曇らせた。

 色々事情があってその後すぐに軍を去ってしまい、いまとなっては残念ながら生死も不明である、と。

「諸事情?」

「は・・・・」

 迷ったあとで、彼女は付け加えた。

ダークエルフデックアールブ族出身者だったのです」

「・・・なるほど」

 マルリアンはグラスの赤い液体に目を落とした。

「・・・こんなことは、私の胸のうちだけに留めておくべきことなのだろうが。いまにして思えば、うちの国が本当におかしくなり始めたのは、それほどの奴が軍を追われるようになった辺りからだな」

 グラスを回し、空気を含ませてから、嚥下する。

 ―――現政権が中枢に座ってからだ。

 マルリアンはそのように思う。

 神話伝承上の、我が種族の指導者だったという者の遺訓とやらを、宗教じみた神格化まで持って行った連中。

 馬鹿げている。本当に馬鹿げている。

 流石にここまでの政府批判は、胸のうちに収めた。

「軍学校の教官までいったデックアールブといえば、おそらく私と肩を並べてロザリンドで戦ったような奴だな。白に生まれて、軍に残っていれば私と階級も変わらんほどの奴だろう。名はなんという?」

「それは・・・・・・」

「当ててやろうか? ディネルース・アンダリエル大佐だろう?」

 目を丸くするのは、カランウェンの番だった。

「ご存知だったのですか・・・」

「いい野戦指揮官だったよ、あいつは。最高の奴だった」

「・・・はい。立派な教官でした」

 そうしてカランウェンは、本当に驚くべきこと―――出来れば知りたくなかった情報を上官から齎された。

「奴なら生きてるそうだ」

「そ、それは本当ですか!? いま、どちらに―――」

「敵軍にいる。階級は少将。敵の第一軍のほうで、旅団一個任されて我が国に攻め込んでいる。旅団まるごと、デックアールブで構成されている、と。籠城前に、外電翻訳の記事で知った」

「・・・・・・・」

 若干虚ろげな目をしたマルリアンはグラスの残りを飲み干し、カランウェンのほうは茫然としていた。

「なんてことだ・・・なんてことだ・・・・」

「ああ、同意する。この戦争は、そんなことばかりだ」

 マルリアンは伝令で到着した、上層部の命令書を取り出して見せた。

「ありがたいことに、要塞死守命令を頂いた。その第一軍が、ネニング平原の東南端に到達したからだそうだ。思っていたより早い。先鋒は奴の旅団だ」

「・・・死守。では小官を呼び出されたのは―――」

「重い勘違いをするな。貴公には別の任務を引き受けてもらいたい」

 彼女のために起草させた命令書と、一等少将への野戦任官書を差し出した。

 エルフィンド軍において、一等少将と二等少将の違いは大きい。

 氏族がなんだ伝統がどうだ古参がなんだと言った面倒なく、自己が発した命令で周辺部隊を指揮できるようになる。

 長命長寿、不老であって不死にすらちかい魔種族の軍隊にとって、昇進はなかなか出来ないことだ。

 ただし、いまは戦時。

 アルトカレ軍司令官として与えられた権限を使えば、やれないこともない真似だった。

「古参の部隊を中心に、常備軍四万ほどの兵を脱出させる。全軍でやりたいがそれは無理だ。わかるだろう?」

「はい・・・・」

 一八万もの軍を一挙に動かす力は、もはやアルトカレ軍には残っていなかった。

 準備にどれだけの手間と期間がかかるかもわからない。

 敵に気取られる可能性も高くなってしまう。

「指揮を執るのは第八砲兵旅団のコルトリアだ。四万。いまや貴重極まる兵力。私の独断で、ネニング平原の決戦兵力に合流させる。コルトリアの奴が責任追及云々されないよう、明確に私の発案だと命令書は与えてある」

「・・・・・・」

「貴公にはその脱出行に参加して、そちらの貴公用の命令書の内容を果たしてほしい。その際、一等に昇進しておけば階級章も役に立つだろう」

「これは・・・」

 命令書の中身を読んだカランウェンは、二の句を継げなかった。

 確かに、アルトカレ平原方面の防備を受け持つ部隊がやれると解釈できる内容だ。

 だがそのあまりの内容に、戦きを覚えなくもない。

「失礼ながら、閣下」

「うん?」

「正気ですか?」

「正気も正気だ。酔っちゃあいるが」

 マルリアンは双方のグラスに、二杯目を注いだ。

「箍が外れていようが、腐っていようが。我が祖国は我が祖国だ。何物にも代えがたい。それを守るのが我らの任務だ。責務だ。本分だ。諦めるわけにはいかん。だからその命令書の内容がいちばん効果的だと判断した」 

「・・・なるほど。それで、閣下は?」

「降伏する」

 カランウェンは唖然とした。

 諦めないのではなかったのか。死守命令も出ている。

「まあ聞け。この方面だけでもいい、戦が始まってから今日までの死傷者、幾らだと思う?」

「・・・膨大な数になっているということだけはわかります」

「軍で四万。市民で六万だ」

「・・・・・・」

 既に市内では、エルフ系種族にとってもっとも恐るべきもの、失輝死も起こっていた。

 市民に。

 それは、強い絶望感などによって、生き続けることを自ら止めてしまったエルフ系種族に起こる。

 肉体は抜け殻となり、生命の輝きが消え失せ、死に至る。

 二八センチ砲弾が直撃した、市民向け病院で起きた。

 絶望した看護師や市民たちが死んだ。

「私は驚いたよ。これが近代戦か、と。失輝死など、滅多に起こることじゃない」

「・・・・・・」

「だがこいつに潜んでいる本当の問題点はそこじゃない。これは我らに比べて耐久力の劣る人間族の軍隊が、いま同じような戦をやれば、もっと死ぬ。傷つくだろう。近代兵器の威力は、どの種族だろうと等しく圧し掛かる。オルクセンの連中でさえ」

「・・・・・・」

「問題は、我ら魔種族が、長命長寿で、不老であって不死にちかい存在ですらあり、それゆえに出生率は低いということだ」

「・・・・・・」

「なぁ、少将。いってみれば、たったひとつの戦でこれほど死んで、傷ついて。うちの国はこの先も続くであろうこの戦争が終わったあと、いったいどうなっていると思う?」

「・・・・・・」

 考えてみたこともなかった。

 だが、確かにその通りだ。

 国家として成り立たなくなる―――とまでは、いかないだろう。

 だが、屋台骨が軋むほどの事態に陥るのではないか。

 もちろん、国家として存続できれば、だが。

 しかし例え国が滅んだとしても、種族としてはたいへんなことになる事実に変わりはない。いったい、元の数に戻るまで何年かかるのだろう。

 傷者も―――とくに、四肢を欠損した者や、聴覚や視力を喪失した者たちも、永遠にちかく生きていく。それは、生きとし生ける者に等しく与えられた権利だ。

 周囲の者たちは、彼女たちを社会復帰させるべく努力に努力を重ね、支えていかなければならなくもなる。これは、生きとし生ける者に等しく与えられた義務だ。

「なんて戦争なんだ・・・」

 愕然とした。

「そう。そこにこの戦争、つまり魔種族同士の近代戦の問題点がある―――」

「・・・・・・・・」

「私が思うに、オルクセンの連中はこの問題を織り込み済みだ。実際の損害の前に、慄いてはいるだろうが。だから砲撃だけで始末をつけようとしている」

「・・・・・・」

「奴らの砲弾と我が種族の命は交換できない。やらせてたまるか。だから降伏する」

「・・・・・・」

「署名者は、そいつはこの戦争がどんなかたちで終わるにしろ、オルクセンからか、エルフィンドからか。どちらにせよ断頭台にかけられるだろう」

「・・・・・・」

「だから私が、この私自身の発案と命令で降伏する。この任務は他には任せられん」

「・・・・・・」

「そうして、たいへん矛盾するようだが。貴公らには、一日も長く、より強く、この命令書に記した、オルクセンをもっとも苦しめるかたちで継戦してもらいたい。奴らも厭戦気分に陥るまで戦い続けるしか、この戦争に勝つ方法はない」

「・・・・・・」

「それにまあ―――」

 マルリアンは、ちょっと凄絶な笑みを浮かべ、杯を掲げた。

 そうして謎のようなことを言った。

「今回の場合。アルトリアは、継戦するより降伏するほうが奴らに打撃を与えられるのだぞ?」



 エルフィンド軍による解囲行動は、一二月二三日夜半に実施された。

 この戦術行動が極めて巧妙であったのは、直接的に脱出するコルトリア将軍の四万以外に、開始時間を連携するかたちで、約三一〇〇の兵がビフレスト方向に牽制攻撃を仕掛けたことにある。

 彼女たちは午後八時、まず魔術通信波の妨害に出た。

「なんだ、これは!」

 驚いたのは、上空を飛行中だったオルクセン軍大鷲軍団のウーフー中隊所属の一羽と、要塞外周の包囲線に配された部隊のコボルト通信兵たちだ。

 あの装甲艦リョースタが試みた方法を、マルリアン大将が知り、市民の協力を得て実行に移した。

 総計で六〇万ちかい者が、魔術通信波上で大声を上げたようなものだ。

 第三軍側は、魔術通信と魔術探知が使用不能に陥った。

 そうして、特別支隊と名付けられた約三一〇〇の兵がビフレスト方向へ夜襲を仕掛けた。

 当初、この決死的とも無謀とも言える戦闘を、マルリアン大将は自ら指揮をとろうとした。軍装を纏め、首に下げた紐をつかって拳銃嚢からいつでも取り出しやすいよう拳銃を吊り、サーベルを帯びて出撃発起点に現れた。しかし、実働的な指揮官だった二等少将がこれを一目見るなり、

「閣下、ここまで来られては危ない! ご心配なく! 私がしっかりやりますから、下がっていてください!」

「・・・そうか」

 少将はマルリアンの副官に目配せなどもし、やや自暴自棄になっていたこの上官を後方に下がらせた。

 そうしてから、特別支隊はビフレストのオルクセン陣地に突入を図った。

 オルクセン軍では―――

 敵の解囲行動がある可能性は、十分に警戒もされていたので、通信混乱のなかにあっても哨兵がこれを発見。

 照明弾を次々に打ち上げ、迎撃の射撃戦を始めた。

 この砲音や小銃音がアルトリア北方方向に響き渡るなか―――

 北東方向の鉄道線に沿って、緊急時備蓄のありったけの糧食と医薬品を持たされた四万の兵が、脱出を始めた。

 それは慎重かつ、整然とした行軍だった。

 各部隊の行軍間隔を決して開けないようにし、相互に伝令による逓伝で連絡を取りながら、北方へ向かって逃走を図った。いちばんの困難が予想された後衛には、カランウェン少将の部隊約四〇〇〇がついた。

 一部の部隊は、市中を流れる河川を利用した。

 この河川は鉄道線に沿ってもおり、ここに僅かながら残っていた川蒸気船と、石炭を使い、兵を満載した貨物輸送用の艀を引っ張るかたちで出発した。

 要塞近郊からしばらくの鉄道線はオルクセン軍の砲撃により破壊されていたが、やがて無傷のものに辿り着いた。

 通信妨害の圏外に出てからは、魔術探知の得意な兵たちが前衛や側防につき、オルクセン軍の追撃を警戒した。

 オルクセン軍側では、この発見が遅れた。

 彼らはすっかりビフレスト方面への攻撃に目をとられ、そちらを本格的な解囲行動だと思い込んでしまっていた。

 夜半を過ぎ、未明近くになって、何か大きな集団が北方に向かっていることを偵知出来たが、第二軍団にいた第二騎兵旅団も、第七軍団北縁の第七師団捜索騎兵も、ついにこれを追尾しきることが出来なかった。

 これはこの戦場に限らず、ベレリアンド戦争のほぼ全期間に言えたことだが、戦前に懸念された通り、オーク族とペルシュロン種で構成されたオルクセン軍騎兵はあまりにも愚鈍で、不活発であり、騎兵伝令に少し動いたくらいで、まるで戦局に寄与しなかった。

 騎乗ゆえにコボルト通信兵すら編成に含ませることがやりにくい彼らは、とくに夜間における行動能力や偵察能力がずいぶんと低かった。

 作戦は、マルリアンの読み通りに成功した。

 オルクセン軍はあまりにも鉄道線を戦闘に巻き込むことに対し、及び腰になりすぎていた。ここを脱出路に選べば、どうにかなるのではないかという企図である。

 だがこの夜。

 代わりに、夜襲を仕掛けた三一〇〇の兵は、指揮官の少将が重傷を負うほどの被害を受け、ほぼ壊滅した。


 

 アルトリア南方第八軍団の担当戦区にあって、要塞より六キロの位置にあった第三軍司令部では、夜半、野戦電信による報告を受けるまでもなく、まずこの戦闘の生起を砲声に依って知った。

 遠くアルトリア越しに、ビフレスト方向に閃光上縁が望見でき、砲声も響いてきた。

 司令部の者や、観戦武官や従軍記者たちが飛び起き、この様子を目撃している。

 観戦武官の一人、キャメロット陸軍歩兵大尉のイアン・スタンディッシュにすると、夜戦の遠景は極彩色に思えた。戦場に生気などなく、陰鬱で、灰色だという先輩将校たちの言葉は、少なくともこの場には当てはまらない、と。

 次々と打ち上げられる照明弾の煌めき。

 発砲によるものと思われる閃光。

 そしてどこか華麗でさえある、着弾。

「・・・・・・」

 次の瞬間、ではあの煌めきの下では何が起こっているのだろうと思い至り、スタンディッシュはぞっとした。

 戦闘。

 夜襲。

 白兵。

 きっと、この世に現出した地獄のようなものだろう。

「やあ、スタンディッシュ君」

 ふと気づくと、傍らに巨躯のオーク族が立っていた。

 影になっていたが、すぐに誰だか分かった。

 第三軍司令官のアロイジウス・シュヴェーリン上級大将だ。

 スタンディッシュはこの戦線に従軍して、はや一か月近くになるが、すっかりこのオーク族の将に心酔している。

 容貌魁偉で、日常の言葉使いは荒々しく、最初は文字通り怪物のようだと思えたが、戦場のあちこちを自ら動きまわり、士気を鼓舞してまわる将だった。そうした姿を真近に接し、打ち解けてから話してみると驚くほど知的でもあった。

 このオーク族の将は、新しい青灰色をした軍服生地が制定されると、さっそくこれを用いた特別仕立ての揃いを作らせ、略帽に防塵眼鏡を巻き、サーベルや拳銃嚢を帯びて、乗馬用長靴を履き、騎乗になって、実に縦横に戦場を動き回った。

 あるときなど、兵たちが殴り合いになるほど交通混雑で揉めている交差点に遭遇して、泥にまみれることをいとわず、自ら交通整理を行ったことがあり、スタンディッシュなどは目を丸くした。

 彼が率いる第三軍も、そのような将軍の姿を反映したかのような存在だ。

 一度動くと、たいへん果敢な前進をする。与えられた軍用地図から飛び出してしまった前衛までいるらしい。

 スタンディッシュがもっとも感銘を受けたのは、シュヴェーリン上級大将が野戦病院を見舞った姿だ。

 砲火によるものか、どうやら全身重傷を負い包帯だらけとなり、視力まで失い、意識すらなかった兵の横に、自ら片膝をついて、静かに何かを囁き、この国でいちばん名誉のある勲章を贈っていた。苛烈ないつもの姿とはまるで違っていた。スタンディッシュだけでなく、その野戦病院すべての者がそのような将軍の姿に驚き、言葉もなく、感銘を受けたものだった。

 勲章は、オルクセン軍にとって重要なものである。

 寿命がまるで無限だともいっていい魔種族の軍隊にとって、出世はなかなか困難なことだ。死への拭い難い恐怖は、人間族以上に潜んでもいる。

 そのようななか、武功を立てた者、かつ重度の負傷を負った者、戦死者の一部には勲章が送られる。

 一級と二級の蹄章、そして最高位の椎葉付蹄章。

 この勲章、スタンディッシュから見てたいへん興味深いのは、階級が下の者ほど授与とともに受給資格を得る恩給金額が高額であるというところにある。

 授与条件もまた実に厳しいが、下級兵士などこの勲章を贈られた場合、慎ましく過ごせばそれだけで暮らしていけるほど恩給が出る。

 逆に将軍たちが授与されてもまったくの名誉的なもので、恩給の類は無いに等しい。たいていの場合、授与された将軍たちは、恩給丸ごと将校会や戦傷者救済互助会などに寄付してしまっている。

 デュートネ戦争で大量の死傷者を出したとき、兵や、遺族のその後が成り立つよう、現王が制定した制度だという。

 シュヴェーリン上級大将は、例え一兵士が相手でも、授与者が出るとこれを自ら贈りに出向いた。

 そのシュヴェーリンが、

「なんともいえん光景じゃな」

「はい、閣下」

 屈託なく彼に話しかけてきた。

 スタンディッシュの機微が、夜目の効く種族の将軍にはしっかりと見えているらしい。どうかしたのかと尋ねてきた。

「ええ―――」

 幾らか迷ったあとで、スタンディッシュは説明した。見惚れていたこと、それを自ら叱るような心持ちになっていたこと。

「ふむ。それは軍人の―――いや、心を持つ知的生物全ての業じゃな。むろん、儂も例外ではない」

「・・・・・・」

「生き物とは、奇妙なものだ。夢物語などではあるまいし、勧善懲悪で割り切れることなどまるで無い。おぞましい、殺し合いの光景すら美しく思える。逆もまたしかり。何もおかしなことではない」

「・・・・・・」

「御国の言葉でいえば、そう―――」

「・・・・・・」

「綺麗は汚い、汚いは綺麗」

「・・・・・・」

「・・・ふむ。そういえばこれは、人間族をたぶらかす魔性の者の科白じゃったな。すまん、忘れてくれ」

 シュヴェーリンはくすくすと笑い、スタンディッシュはこのオーク族宿将への精神的傾斜をより深くした。



 翌二四日早朝。

 オルクセン軍にとってひとつの痛恨事となった、四万のエルフィンド軍将兵脱出が成功裏に終わったあと。

 エルフィンド軍の降伏が申し込まれた。

 アールブ語と、キャメロット語とで記された降伏申込文書が軍使の手によりオルクセン軍第八軍団前線に届けられ、これはただちに第三軍司令部へと送られ、翻訳された。

「・・・降伏」

 シュヴェーリンなどには、意外であった。

 アルトリアはまだまだ継戦を図るに違いないなどと彼の司令部参謀連は判断しており、決着を着けるため、各師団による攻略着手も準備されていたほどだったからだ。

 オルクセン軍は、日ごろの備えとして、自国の要塞には四か月から六か月分の食糧、弾薬、医療品を蓄えている。この例に当てはめるなら、アルトリアはまだまだ防戦を図れるに違いない。そう見ていた。

 この日の砲撃準備も例外なく行われていたが、中止となった。

 まずは休戦となり、報せを受けたオルクセン軍各陣地からは一斉に歓声が上がった。

 ともかくも降伏を受け入れることとなり、午後三時ごろになって、会見場とされたミーミルという小さな村に双方の司令官が合流した。

 ちょうど、第八軍団とアルトリア要塞の中間地点だ。

 第三軍の側では、司令部を置くロギンの村までマルリアン大将を来させてはどうかという参謀もいたが、これはシュヴェーリンの大喝一声により却下された。

「一軍の将が降ろうというとき、更に恥辱を与えるとは何事じゃ!」

 彼はそう告げ、ブルーメンタール参謀長と二、三の参謀、僅かな警護の兵だけを連れて自ら赴いた。

 会見時間がどうであれ、現地には早く向かうことにもした。

 会見の場を整えるという名目もあったものの、マルリアンと実際に顔を合わせるのは初めてで、会ってみたいという思いも上級大将には強かったのである。

 現地では、双方の兵により降伏調印の場とされた村会所が丁寧に清掃された。

 壁や、塀には弾痕があり、庭には一本の樹が残っているだけだった。

 やがて予定時刻より若干早く騎乗にて到着したマルリアン大将の容姿容貌に、シュヴェーリンと彼の幕僚はまずたいへん驚かされ、いったい本物なのかと一部参謀たちは騒めいたが、そこはシュヴェーリンなど歴戦の将であるから、彼はおくびにも出さなかった。

「この度は、ご面倒をおかけします」

 自らのサーベルを差し出すマルリアン大将に、

「いやいや、閣下。どうぞそのまま、ご帯刀下さい。これは武装解除後も、将校の方全てに同じ処置をとらせて頂きます」

「・・・感謝いたします」

 諸条件や申継事項については、すぐに妥結が成立した。

 アルトリア要塞側が、全面降伏というかたちを最初から受け入れる姿勢を示したためだった。

 双方の事務官が調印文書を手早く整え、シュヴェーリンとマルリアンはそれぞれに正署を施した。両参謀長が副署役となった。

 署名を終えてから、シュヴェーリンはこの敵将との雑談を欲した。

 先方も同じ様子であった。

 少しふたりで話でもしませんかとシュヴェーリンのほうから誘い、マルリアンは同意した。

 コーヒーが用意され、双方とも少しばかり心配の色を示す互いの参謀などを離席させ、村会所の応接室で談話となった。

 互いにキャメロット語が出来たから、これを用いている。

「閣下とは、こう言っては失礼でありましょうが、知らぬ者同士のような気が致しません。ロザリンドで、お互い軍勢を率いる身として、相まみえさせて頂きましたな」

「まったくです。同意致します」

「あのとき、私は惨敗致しましたよ」

「今回は、立場が逆になってしまいましたな」

 ややぎこちなくではあったが、両者は笑いあった。

 シュヴェーリンは、この戦闘でのマルリアンの持久を称賛し、とくに前夜の解囲脱出には感服したと述べた。

「また、してやられましたわい」

「なんの。こちらこそ。貴国の火砲、あれは凄まじかった・・・ 貴軍はあの火砲で勝たれたと申し上げても、これはきっと失礼にはなりませんでしょう」

「それは、それは」

 互いにどうやら、なかなか相手は面白い御仁だとわかりかけたところで、シュヴェーリンは提案をした。

「どうですかな、閣下。これは我が国の王のやり方なのですが、ひとつこの席は互いの階級、立場など忘れ、それぞれ普段使いのままの言葉で話しませんかな」

「―――結構です。大いに結構。ではそのように」

 それからロザリンド会戦の話や、今回の戦闘について話をした。

 マルリアンは、彼と談笑を進めるうちに、奇妙な違和感と、得心とを一度に覚えている。

 シュヴェーリンは、明らかに彼女や、エルフィンド軍のことを敬している様子なのだ。自国の軍の中枢に座る将軍連などとより、よほど会話が弾んだほどだった。

 どうやらこのオーク族の将は、一種のロマンティストであるらしいと思えた。

 相対した敵軍は、常に偉大であるとでも思い込んでいるような。

 とんでもない誤解だと、自嘲や羞恥すら覚えた。

 ―――うちの軍隊がそれほどまともだったなら、どれほど良かったことか。

 だからこそ、彼らは強いのだろう。

 あまりにも用意周到で、あまりにも準備万端で。何に対しても手を抜かない。

 彼らは、敵もきっとそうであるに違いない、何処の国もそのような努力を重ねているに違いないと思い込んでいるのだ。

 何たることだ。

 おそらくその原因となったものの端緒は、ロザリンドの会戦であまりにも惨い敗戦をしたから。つまり、私たちに大負けしたから。そこから立ち直るために、オークたちはそんな軍勢を作り上げたのだろう。

 何ということだ。

 本当に何ということだ。

 マルリアンは、近代戦の死傷者の多さにはたいへん驚いた、あの砲撃戦の凄さ、火力重視は、きっとその損害を低くするためでしょうと尋ねた。

 シュヴェーリンは頷く。

「まさしく。我が兵はみな喜び勇んで戦ってくれます。その兵を殺さねばならん。ならば如何にして火力を発揮させてやるかは、私のような者の責務でありましょう」

「なるほど。如何にして兵に損害なく戦うか、ですか」

「ええ」

 皮肉なことだ。

 なんと皮肉なことだ。

「では、きっと。このたびの私のやり方は、おそらく貴軍のお眼鏡に適うことでしょう。たとえ時間はかかっても、やがて貴方のお眼鏡にも」

「・・・それは?」

 怪訝な顔をするシュヴェーリンに対し、マルリアン大将は、若干の心苦しさを覚えつつも、勝ち誇った感情を抑えきれなかった。

 たとえシュヴェーリンという敵将に感服しつつも、攻城戦を耐え、味方の損害に心を痛め続けた将としては、当然の感情であった。

 世に、「一矢報いる」などという言葉がある。

 マルリアンの場合、その矢は一本どころか、複数あった。

 一本目は、オルクセン軍の戦術思想を見抜き、四万の軍勢を脱出させ得たこと。

 そしてもう一本は、オルクセン軍の体質そのものを見抜くことで、いま、この瞬間から成そうとしている。

 彼女はそれを告げた。

「今回、降伏致しましたのは。もうアルトリアには食糧が無いからです。籠城により、もともと欠乏しかかってはいましたが。いやはや、本当に貴国の火砲は素晴らしい。まさか都市食糧庫を吹き飛ばしてしまうとは。お恥ずかしい話ですが、医療品や、燃料用石炭の類ももう尽きております」

「・・・・・・」

「ですが。オルクセンの兵站はたいそう優れているそうで、安心しております。兵一四万、市民五七万。お世話になります」

「・・・・・・」

 誰も予期しなかった危機。

 あるいは、用意周到であるオルクセンだからこそ、敵もきっとそうであるに違いないと思い込んでいたゆえの危機。

 その戦争計画全てを狂わせてしまうことになる、一大危機。

 それは世にあって華々しいとされている戦術上の勝敗や、目のいきがちな兵器の性能や、軍装や軍服や。それらのものより、ずっと遥かに地味な一矢だったであったかもしれない。

 だがそれゆえに、あまりにも多くのものに影響を与え、その計画を狂わせ、震撼させ得る、巨大極まる一矢だった。

 ―――オルクセン陸軍第三軍の、兵站崩壊危機が始まった。



(続)

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