第25話

(25)


 ――見開いた瞳孔に浮かび上がるのは黄金色の輝き

 

 僕は反射的に屈みこんだ。それだじゃない。身体を反転させてアスファルトに転がる。


 ドスン!!


 激しい音が響く。

 僕は片手で目一杯力を籠めてその場から発条の塊のごとく、横に飛ぶ。

 その動きが完了するまで五秒もないだろう。

 だが時が驚きを貫き、静寂を引き寄せる迄には十分な時間だったかもしれない。

 僕は片膝突きながら半身を上げて見た。

 そこに、

 柱のような岩注に貫かれて、悶え苦しむ僕のドッペルゲンガー、いやそれだけじゃない。強烈な岩石に吹き飛ばされて、共に身体を貫かれて驚愕の表情を見せている比嘉鉄夫が居たのだ。


 串刺し!!


 僕の脳裏はそれを理解した。


 なんじゃこれは!!


 待て

 これはどういうことだ

 比嘉鉄夫は一体?

 何故?


「なんだ…これは?」

 心の赴くまま僕は呟いた。

「甘ちゃんなんだよ、お前はぁぁ!!」

 ラビリンス様な高架下に声が響く。それはまるでミノタウロスの咆哮だ。

 高架下の暗闇で響く音。

 これはサンダルの音。

 そしてヨレて地面をすれるよう音は。

 そう、

 比嘉鉄夫のサンダルの音。

 僕は音の方へ顔を向ける。

 そう、そこには確かにはっきりと比嘉鉄夫が立っていた。

 暗闇が額に垂れた髪を染め、その相貌は黄金色に輝き、赤く染めた瞳孔が僕を認識している。

 まるで怒れる闘牛の様だ。

 しかし、

 その瞳の奥は先程迄僕が挑発して男の眼じゃない。

 まるで精密な作業をこなす、冷静な一流の職人の眼差しだった。


 …こいつは

 ひょっとして

 かなりヤバくねぇ


 そんな状況だと僕は思った。

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