第23話
(22)
あまりの呆気なさ。
威勢のいい啖呵の割には早くに訪れたエンディング。もし何もない幕切れならば、観客は金を返せといって暴動化するだろう。
まさに比嘉鉄夫の心はそんな何とも言えぬ不気味さを得た寒気に襲われた。
…こいつは何だ?
なんとも呆気ねぇ
三流ロープレでもまだもうちょっと増しなエンディングだぜ。
比嘉鉄夫は眉間に寄せた眉を、しかし緩める。
人生には幾つか大きな幸運というもがある。
俺自身も工場勤めで思わぬ幸運で仕事を成せたことがある。ミクロミリ単位の削りの中で思わぬ幸運が成功を運ぶ。つまり削りすぎて、尚、それでいいという事だ。納品してそれが分かることがあった。
まぁそれは単純に依頼時の設計ミスだが、おかげで良いという、まるで神様の贈り物のような幸運だ。
つまり
俺の前でどさりと倒れたのは何でもない事実だろう。
そいつを幸運とは言わないか。
こいつが何か企んでいたかもしれないが、事実はこうだ。
おかしい。
可笑しいぜ。
だが、はっきり言える。
俺はこれで『彼女』と行けるのだ。
新世界の恍惚境地(エクスタシー)にな!!
さて
やれやれこいつの躰、もしかしたら心臓にあたって既に死体かもしれねぇが、運ばなきゃな。
そう思って踏み出して、奴の身体に触れた時だった。
不思議に思うべきだったんだ。
この黒い物に。
俺は思っていたんだ。
こいつは暗い翳だったんだって。
だけど、違うんだ。
なぜだか分からないが
段々と、視界が…
視界が消え始めたんだ。
こいつは何だ
何だ
その時、俺は驚いた。
何とあいつがすくっと立ち上がったんだ。岩槍が心臓を貫いたままの姿で。
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