第19話
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奴は驚いたはずだ。何故なら僕が瞬時に相手の手の届かぬ所へ飛んだ、いや逃走といっていいのだが、消えたのだから。それは瞬きの数秒。
おかげで余裕を持って鍵を外してクロスバイクに跨ることができた。それだけじゃない。冷静に『次』をどうすべきか、考える子tも出来た。
つまり次とは?
まず結論を先に出せば、奴、つまり比嘉鉄夫を何らかの方法で捕縛することは変わらない。魔術『春眠、暁を覚えず』は発動前に霧散した。
それは眠らせて安全にという方法が消え去ったことも意味している。
つまり次は、それ以上の事だ。
まぁ個人的な感想としては、ちょい怒らせすぎて、頭がカッカッしているあいつに何をすれば黙らせて捕縛できるかとなると、あいつを悶絶させるほどノックダウンさせて捕まえるしかないというのが、僕のシンプルな答えだ。
つまり、シンプル・イズ・ザベスト。
しっかりぶれない考えが大事だ。本当に社会に出れば色んな状況が出て来る。
営業での折衝、実務責任進捗の管理など、自分にぶれが出ると担当しているプロジェクトそのものが霧散しそうになりそうな時が出てくる。そんな時、必ず大事なのは目標にたいして自分自身がぶれないことだ。
まぁまだ社会人一年生で、まだまだまだこれから先学ぶこともあるだろうけど、今はこのちっぽけな自分の深淵ともいうべき――シンプル・イズ・ザベストのに従うのが賢明だ。
ではその答えは。
僕はクロスバイクを転がす。
きっとあいつは今頃あたふたしているだろう。
目の前から消えた僕自身に驚いて。
僕はペダルを漕ぐ。
そして一目散に走り出す。
あいつに向かって。
『逃げるが勝ち』とは何も危険から逃走することが真の意味じゃない。逃げて『益』を得る。つまりこの場合、冷静な勝利だ。それを得るために僕は逃げた。そして逃げた簿僕は今、駿馬のように今度はあいつに向かって走り出している。
つまりあいつの目に再び触れる様に。
それはだ。
あいつをおびき出す為に。
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