第14話

(14)


 男はがばっと顔を開けるとこちらを見た。

 その目は白目が黄金色に輝き、そして瞳孔が赤く輝いている。


 僕は、後ろに飛び跳ねた。

 跳ねながら僕は咄嗟に思った。


 ――こいつの目!?


 僕は危険を感じて総毛立つ。

 警報が鼓膜奥で鳴り響き、歯が鳴るのが分かる。この警報はさっきのようなレベルじゃない。逃げ惑う人々の悲鳴のように高らかに警報が鳴って、鼓膜奥でぶんぶんと

 鳴り響いて聞こえる。

 その音の中で渦巻く精神が眼に映したものは、黄金色に輝く、赤い瞳孔。

 僕ははっとして思い出す。

 この男の輝く魔を秘めた眼色。


 そう、こいつは…

 あのミレニアムロックを探す旅で僕と松本を襲った怪物――あの二頭の巨大な魔獣イノシシの眼と同じ輝きだった。


 つまりだ。

 そう、

 今こいつは魔獣なんかじゃない。

 

 『魔』を持つ人間。


 ――つまり、魔人なんだ!!


 僕は思わず舌打ちをした。


 ちっ!!


 そして叫ぶ!!


「松本めぇ!!!」


 男は立ち上がる。

 その容貌はどこかバケモノじみていた。

 薄毛の垂れた額から覗く原色に染まる眼、それにやや曲がった鼻筋。それに歯が無いのか、口端から涎が垂れていた。だがこの男から何か特別な異常さを感じさせるのはそれだけじゃない、手がしきりと股間を触りゆすっているのだ。

 それがこの男の何を意味するのか。


 僕はモードを切り替えなければならなかった。安直に捕まえて保護するなんて言う、『優さ優さ(やさやさ)モード』から、確実に戦闘力が必要な『殺る殺る(やるやる)モード』に


 くそっ!!


 はじめて見た時は楽だと思ったのに。


(僕一人で魔人相手させるつもりか!!松本!!)

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