第12話

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『魔術師の目(マジシャンズアイ)』の指し示す方向へと僕は駆ける。息上がる胸の奥で激しくなる動悸。

『魔術師の目(マジシャンズアイ)』は僕を雑木林へと向かわせる。

 スカイビルのちょっとした隙間にある雑木林。一体誰が大都会大阪の高層ビルの一角にこんな小さな林があると思うだろう。

 人工的に造られた雑木林とはいえ、小さな川があり、それでいて夏の強い日差しを避ける場所には持って来いと言えた。

(こっちだ…)

 靴底に土が着くのが分かる。

 もし時刻が夜ならばここは涼しく、ひと時の涼を得るにはもってこいに場所だろう。

 しかしながら今はまだ太陽がぎらつく時刻。雑木林に架かる影は翳りを濃くして、深い輪郭で僕の歩みをからめとってゆく。

 まるで誰かが僕の影を掴んで、自分の棲み処に引き込んでいくような錯覚に交じりながら、自身の中に鳴り響き始めた警鐘が聞こえた時、僕は長いベンチにひとり腰かけて俯いている男を見つけた。『魔術師の目(マジシャンズアイ)』は確実に目の前に男を指している。

 つまり…

 こいつが…


 ――比嘉鉄夫

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