第10話
(10)
突然、何かがぶつかり割れる音がして、瞬時に鼓膜を切り裂くような悲鳴が辺りに鳴り響く。
それは阿鼻叫喚ともいうべき世界を見たものの成すべき叫び。
それは幸福と不幸を分つ声。
――逃げろ!!
きゃぁああああぁああああ!!
僕は振り返り見た。
僕の網膜に映し出された光景。
それは逃げ遅れて幼子を抱きながその場にしゃがみ込む婦人に向かって、空から降り迫る鋭利なガラス破片!!
――それを見た瞬間からのコンマ何秒。
僕は空から降り迫るガラス破片を見た時、咄嗟にスマホの画面で素早く動き、それを素早くフリックした。
その動きは普段から、もし何かあれば直ぐにでも動けるよう自分で訓練した動作で、画面に書かれた言葉は是なら何とか瞬時の危険を避けれるだろう手短な『魔術言語(ルーン)』。
――それは偉大なる『神の言語』
僕が素早く書いた言葉とは!!
それは『回風』
そして本能ともいえる動作で婦人へと迫るガラスの刃へ『言葉』を投げつけた。
その瞬間、空で黄金色の反射が見えた。
それは突如、現実世界に『魔』を巻き起こす。
そう、それは回風、
別名、つむじ風。
風は瞬時に全てを薙ぎ払う。
それは幸も不幸も。
それが僕の信念。
びゅうっっぐるぐるるっっっぅうう!!
音を響かせ小さ空へと昇る渦巻きが、ガラスの破片を吸いこむ。しかし、噴き上げる渦巻きとはいえ、加速してくる落ちて来る地球の重力には勝てない。
しかしながら婦人へ襲い掛かる様に降り注いだガラス破片は突如、婦人への直線軌道から外れて速度を落とすことなく、勢いよく激しい音を立ててしゃがみ込んだ婦人の側に落下した。
幸い休日の早い時間だったのとここで週末のイベントが無かったことが良かったのかもしれない。ガラスは誰もいない空間の地面に弾けるようにぶつかり破片となり四散した。
僕はふぅと息を吐く。とりあえず取り除くべき危難が去った。
近くにいた誰かが婦人へ声をかけるのが聞こえる。その騒動に気が付いたのか遠くから警備員が血相を変えて駆け寄って来るのが見えた。警備員はしゃがみこんで動かない婦人をその場所から引き剥がす様に移動させると、ガラスの落ちた場所に戻り、帽子の下から上真上を見上げた。
見上げると声を荒げる。
「――またか!!」
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