第7話 基地の中

ゲートにはロボット兵士とセンサー類が、侵入者に目を光らせていた。

ここは人手が少ないのだ。普通、基地の入り口には人が立つことが慣例となっている。

この時代になっても、AIは完璧な判断が出来ない、と言うよりも、柔軟な判断を要する事態には対処できないのだ。知識は蓄えられても、機転の利く判断が出来ないのが、今のAIの弱点だった。だから、歩哨には人間が任務に当たるのが、宇宙に出て暮らすようになってからも連綿と続けられてきた。


それがこの基地では、ロボットに任せている。


だから、人手が足りていない、人員不足が深刻なのだと認識されるのだ。

AI兵士は、対応は一応人間らしく振る舞えるし、先ほどの兵士など、人間としか見えなかったが、本来人間がやるはずのことを代行しているに過ぎない。

神は剛に話しかけながらも、基地の様子をつぶさに観察した。

何があるかわからない。ひょっとするともうこの基地も、違った方法で侵略を受けているのかもしれない。

神はこの異常なまでの心配性と用心深さで数々の修羅場をかいくぐってきたのだ。


彼の人生は決して順風な物ではなかった。

人生のスタートは孤児として、親を知らない施設での生活だった。

施設を出てからは、勉強したいけれどお金がないので仕方なく軍隊に入り、元々優秀だったこともあり、研究職への道をたどった。

そこで剛と知り合ったのだが、剛もまた、神と同じような身の上だった。

彼は孤児ではなかったが、父親はおらずに、娼婦の母に育てられた。


剛が子供の頃に母は犯罪者に銃で撃ち殺されてしまい、身寄りがなくなったので保護プログラムで養子として軍人の家に迎え入れられて、軍隊に入隊。

こちらも適性があって、研究職になり、神の助手をやるようになったのだ。


二人は似たもの同士、境遇も近いものだから、意気投合して、いつの間にか無二の親友になっていた。

数多くの修羅場も経験したし、相当にやばい研究にも携わっていたこともある。

そんなだから、この辺境の地に左遷されてきたのかもしれない。


正体不明の攻撃者の事も、この二人は知っていたようであるから、二人の研究と何か関係があるのだろう。正体まではつかんでいない様子だったが、一般の兵士たちよりは、敵に対する知識はあった。

実はこの正体不明の生物は、3体人類が捕らえていた。

皮膚の強度などを研究し、解剖して、弱点と、殺傷兵器の研究をしていた。

神と剛は、怪物の本体は見たこともなかったが、データを元に兵器を研究していたのだ。それだから、この辺境の地に赴任させられたのだろう。

それにしても大群による襲撃は予想外だったようで、まだ準備も出来ていなかった。

それともデータを取るためだけに基地を潰した?

神も剛もそのことに思い至ったが、口にはしなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

負けから始まる勝利への道 こみつ @komitsu690327

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ