第6話 アーク 7

第81基地は上を下への大騒ぎだった。

化物達の襲撃の情報が、ここにも衝撃を撒き散らしていた。

警戒態勢になっていたために、銃を持った番兵が、神達の乗ったトラックを止めた。

「何処の所属ですか?」

番兵の問いかけに、トラックのハンドルを握る兵士が答えているのが聞こえてきた。

神はそちらの方に声をかけて、自分の正体も伝えておいた。

もちろん番兵程度では、神の正体などわかりはしなかったが、上官には伝わるはずであるし、わからなければさらに上へ報告が行くはず。

その分受け入れがスムーズになる。

多分この基地においても、あの化物達のことをよく知っているのは、神と剛をおいて他にいないだろう。

ただそれが、絶対的な防衛策を生み出すものとなり得るかと言うと、そうではなかったのだが。


門番の兵士は通信機で報告を入れた。

「暫く待ってください。少し混乱しているようです」

通信子を使いながら、こちらに声をかけてくる。

3分ほど待たされただろうか。

頑丈な金属製の扉が、重々しく動作をして、ゆっくりと開いていく。

扉と言うよりも、基地を守るシールドといったほうが良いだろう。

軋みをあげて開ききると、もう薄暗くなって照明の灯り始めた基地内を見ることは出来た。


基地はまるで蜂の巣をつついたように人と車両が、忙しく動き回っていた。

「すげーな」

トラックの兵士が、声を上げて様子に驚いた。

それほど、普段見慣れない種類の防空車両や移動式の砲台などが、配備のために動き回っており、装甲車やその他の車両も、基地にあるすべてが弾薬を満載し、戦闘配備の真っ最中だった。

「これでも足りないな」

剛が神に囁いた。

「ああ、この程度じゃな」

神も真剣な眼差しで様子を伺いながら頷いた。


トラックに乗る兵士の一人が神たちに向かって話しかけてきた。

「大丈夫ですかね?」

当然の質問だが、神にも剛にも答えはわからなかった。

「なんとも言えないな」

「オレ達の基地があんな様子だったからな」

剛が相槌を打つ。

「そうですよね、あの基地は最前線だった。それが一瞬だからな」

兵士も不安の声を上げる。


「でもまあ、オレ達がやられたのを参考にして、作戦を立て直すだろうから、一度目よりはマシな戦いができるだろうぜ!」

もう一人、隣の兵士が話しに加わってきた。

そんな話をしているうちに、やっとゲートが開ききり、通行ができるようのなった。

トラックはゆっくりと、エンジン音も小さく、大喧騒の基地の中へと侵入していった。



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