第657話:あなどれぬ存在
「神さま……キーファウンタさまっ! どうか……どうか、だんなさまの仔を、おさずけ、ください……っ!」
彼女が絶頂を迎えた瞬間だった。
あぐらを組んだ上にリトリィを乗せるような座位で愛し合っていた俺は、絞め殺されるかのようにめちゃくちゃ強い力で抱きしめられた。
彼女のふわとろ豊満おっぱいが、口を、鼻を覆い尽くし、彼女が絶頂の余韻に浸っている間、俺を窒息に追い込む!
早くリトリィに子供を産ませないと、腎虚で死ぬ前におっぱいで窒息して死ぬっていうか、いやマジで死ぬ!
♥・―――――・♥・―――――・♥
リンク先…【閑話27:おとこを包む、ぬくもりの差】
※性的な描写あり。楽しめるという方のみ、お進みください。
※読まなくても支障はありません。
https://kakuyomu.jp/works/16817139556498712352/episodes/16817330657260193118
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行為後の心地よいけだるさのなかで、俺は間違いないと確信していた。
──リトリィの体温が下がっている。
もともとリトリィは体温が高く、彼女の胎内に深く入ると、本当に「熱い」と感じたものだ。局所だけ40度以上の熱めの風呂に入れた感じ、と言ったら通じるだろうか。
それなのに、今夜はマイセルの中とあまり変わらないのだ。女の胎内の温度を抱き比べる、なんて言ったら俺がどうしようもない屑野郎に思えてきて嫌なんだが、今夜は確かに、リトリィの
リトリィとマイセルとを抱き合わせ、交互にそのぬくもりを確かめるようにして愛し合ってみたのだから、その体温の差の「無さ」は確かだ。
「ムラタさん、そんなにじろじろ見て、どうかしたんですか?」
俺の右半身に絡みつくようにしているマイセルが、少し恥じらうような素振りを見せる。そのとき自分が、二人を見比べるようにしていたことに気づいた。
「……あ、いや、その……すまない、不躾だった」
「いいえ? だんなさまになら、わたしはいくらでも」
反対側で、やはり体を絡みつかせながら微笑むリトリィに、俺は苦笑いする。昼間は暑いが日が暮れるとそうでもないこの世界の夏は、日本より過ごしやすい。こうして妻二人がサンドイッチのように体を密着させてきても、寝苦しいほどでもないというのがいい。
それにしても、こうして両側から抱き抱えられていてもなんとなく感じられるのが、二人の体温の差だ。
妊娠していない時のぬくもりを比べた場合、体温が高い順はリトリィ、フェルミ、そしてマイセルとなる。
けれど今夜は、特に胎内の温度について、明らかにリトリィとマイセルがほぼ同じ──つまり、「体温が低かった」のだ。
──もしかして、オバゥギナ──
たしか「秋
だけどもう一つの意味があって、それが「
漢方うんぬんはともかく、
マイセルとは子供を作れたし、フェルミなんて俺より一つ年下で、一般的に
もちろん、彼女の高い体温が、俺との子がなかなかできない主因であるとは限らない。ただ、一つ仮説を立てるなら。
初めてリトリィと結ばれたとき、それが俺の初めての女性経験でもあったから比較対象もなくて、これが女性の胎内なのかと、その熱さに感動したものだ。だけど、マイセルとも愛し合うようになって、
そのことと妊活との関係を考えたことは今までなかったけれど、ひょっとして
フェルミについては、俺と愛し合ったすぐあとで重傷を負い、しばらく生死の境をさまよった。医者は「極限の状態が生存本能を高めたかもしれない」とか言っていた気がするが、かなり血を流していたし、それで下がった体温が、たまたま受精に有利に働いたということも考えられる。
もちろん、たった今思いついただけのことだ。明確な臨床データがあるわけでもない。
けれど、瀧井さん夫妻の話を思い出してみると、子供ができたのはいずれも夏だということだった。
そして、
もうすぐ藍月の夜──
俺に、「愛する人に愛される幸せ」を与えてくれたリトリィへ贈る最大の恩返しは、俺との子を望む彼女の希望に応えること。
今までどう愛し合っても子供ができなかった俺とリトリィだ。他に有効な手を知っているわけでもない。ならば、
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