9人の魔女

御等野亜紀

本に封印されし魔女

むかーしむかーしあるところに


表紙の動く本がありましたほんの主は


気の強そうな顔をゆがめてなにか言っています


「たすけて」一人の少女がそれに気付きました


「待ってね、今助けてあげるから」


そういうと少女は鍵をあけます


するとたちまち本の中に取り込まれほんの主は表に出てきました


「馬鹿な子だね。でも助かったわ。


閉じ込めた7人の魔術師に仕返しをしないと気がすまないわ」


そういってほんの鍵をしめるとどこかに立ち去りました




物語の始まりはじまり




魔女は早速行動に移りました


一人の魔女から左目を


一人の魔女から右目を


一人の魔女から鼻を


一人の魔女から口を


一人の魔女から右耳を


一人の魔女から左耳を


一人の魔女から髪の毛を奪ってきました




そうしてできた鳥かごの中の顔に言うのです


今日の奉納祭でお前を捧げてくれるは


王の言うことをよく聞いて


私を宮廷魔術師に選抜しておくれと顔は複雑そうにきょろきょろしましたが


自分が何者かもよくわかりませんでした


当然ですね


一つの顔になってもそれぞれは別のものなのですから…


それでも主の言うとおりに


王に仕えればいいのだと思いました





その頃表紙がうごく本は


カタコトカタコトトと音を立てていました


その本の中から飛び出してきている手は鍵を探しているようでした


そこへ片目の魔術師が来て「これをお探しかな?今出してあげるからね」


と言うと少女はぶんぶん首を横に振ります


手だけか飛び出てきて鍵を求めます


魔女はそんなことができるものなのか不思議がりながら


少女の手に鍵を渡しました


少女は器用に鍵穴に鍵を差し入れ回します


そうすると本の中から少女は飛び出してきました





「そんな真似ができるなんてあんた何者だい?」


「ただのおばーさんと同じ魔術師よ」


といいにっこり笑います


おばーさんは仲間が一箇所ずつ部位を知られた話をすると


待っててねすぐに取り戻してあげる


そういうと少女はそこら辺に転がっていたほうきに乗って飛んでいきました





復讐をはたした魔女は上機嫌に王の下へ向かっていました


そこへ猛スピードで追い越すと魔女の前で立ちはばかります


そのかごを渡してもらいます。貸して下さい


魔女はこれは王への献上物だから渡せないといいます


少女は「それはそれぞれの持ち主かいるものです。かえしてもらいます。」


そういうと大きく手を振りました


そうするとどうしたことでしょう篭の扉が開き


それぞれの部位がそれぞれ戻っていくではありませんか





少女は魔女から両目と鼻と口と耳と髪の毛を奪い篭にいれました。


沢山の部位を一片に奪われた魔女はろくに身動きが取れません


少女のたもとにすがりつき返してくれ返してくれと篭から懇願するのです


「貴方は同じことを他の魔女たちにしました。」


「このまま朽ち果てても自業自得です」


「わたしが悪かったわ。お願いだから返してお願い」


「貴方は魔女から1つの部位を奪った。全ての部位をじゃありません」


「私はそこに優しさも混じっていると信じたいのです」


「もうこんなことはしませんね?」


「しませんしません。」


「なら元の本に戻りますか?」


魔女は一瞬躊躇しましたが「わかりました本の中に戻ります」といいました





少女の手によって再びほんの中にはいった魔女は疑問符が生まれます


「鍵はかけないのかい」


少女は言います「鍵をかけたら出入りできないでしょう


そしてこの本もよまれないままです 」


そこで始めてこの本の内容が気になった魔女は読んで見ます





それは優しいおとぎばなしでした


家に帰るまで買ったものものを


こまったひとにひとつ渡して行き


なにひとつのこらなかった彼女の夕食はワインと一欠けらのパンでした


それでも幸せいっぱいの彼女は神に感謝するのでした





そんな優しさを忘れていた魔女から一粒の涙が流れました


目がなければ涙ひとつ流せない


その事実に魔女は深く反省するのでした





本に閉じ込められたとき魔女は悔しさと怒りにあふれていましたが


今は優しさとこの本にいろどりを添えるのに幸せをかんじてました





8人の魔女がひとりの若い魔女を宮廷魔術師として他国から呼び寄せたことを


知るのはしばらくたってからの話です




おしまい

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9人の魔女 御等野亜紀 @tamana1971

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