さようなら
さとすみれ
1話完結
「
「あぁ、もちろん。侑斗も元気でな」
爽玖が引っ越してから二年後。僕たちは変わらず、ずっと連絡を取り続けていた。学校であった出来事を言いあったり、好きな女の子の話とか。(誰得の情報だが、爽玖は席替えでたまたま隣の席になった子が好きらしい。青春してるね……。僕とは違う)
深夜に連絡を取り合うから、よく僕は寝落ちをしてしまう。だから爽玖から「おちゆう」と呼ばれている。
今朝は日曜日だったからいつもより少し遅く起きた。少しと言ったが、少しではない。昼すぎに起きた。カーテンの隙間から漏れてきた光が眩しくて目を覚ました時、嫌な思いが僕の中を支配していた。なんだろう。……気のせいか。
昨日も爽玖とは会話をしていた。僕は途中で寝落ちしてしまったが。枕元で充電しているスマホの画面をつけ、ざっと通知を確認する。深夜はそんなに通知がないから確認するのは楽だと思ったが、もう昼だ。ゲームの誘いだことの今から遊ぼうだことの、たくさんのメールが来ていた。下の方まで見ていくと、爽玖からは一通のメールが届いていた。
「僕、限界なんだ。侑斗に会えないなんて。さようなら」
突然のことに僕は驚きを隠せず、爽玖に電話をかけた。
「LuLuLuLuLu……」
爽玖はでない。
「お、おい、爽玖。おい。出てくれよ。おい」
叫びながらメッセージを残した。メールもたくさん送った。しかし既読はつかない。
「嘘だろ……」
僕は声に出してしまった。
爽玖はどうしたのか……。嫌な思いが頭をよぎる。
その時、インターホンが鳴った。このタイミングで宅配か。そんなものに気を取られている時間はないのだが……。
僕はインターホンの画面をろくに見ずに「はーい」と言ってドアを開けた。
ドアを開けて驚いた。
そこには二年前より大人っぽくなった爽玖が立っていた。
「爽玖……。どうしてここに……」
「会えないなんて、さよならって言っただろ。だから会いにきたんだ。驚いただろ。というか昨日も寝たな、おちゆう」
爽玖は右手でピースを作った。口元はマスクで隠れているからわからないが目元は笑っている爽玖は二年前と変わりなかった。
さようなら さとすみれ @Sato_Sumire
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