2.「半センス」ってなんだ?

 さて、「センス」については分かっていただけたでしょうか。要は「一番理論化しにくい能力や技術」だと思ってもらえると取り合えずは大丈夫かなと思います。


 で、ここからは「半センス」のお話。


 これに関しては「0.はじめに」で解説したとおりで、これ以上あまり語ることはないのですが、要は「数を積み重ねないとどうしようもないけど、その成長速度は人によって差がある部分」です。


 さっきは野球に関しての例をあげたのですが、そこからもう一例取り上げましょう。


 自分がファンをしているオリックスや、横浜は良く、育成選手(一軍の試合には出られないけど、能力が付いてきたら「支配下選手」することが出来る、年俸安めの選手)で「高校から投手初めて、実績はないんだけど凄く伸びたんだよね」みたいな高校生を獲得します。これ、実に理にかなっているんです。


 結論から先に言ってしまうと、「センス」を「論理的に」見極めるほぼ唯一の手段が多分、これなんです。


 どういうことか。基本的に投手というのはずっとエースをやっていましたという人が多いです。


 高校生のエースが野手でプロ入りということはそんなに珍しくはないのですが、それはまあいいでしょう。


 このエースというのは「投手としての経験が多い」です。つまり「投球練習なんかをしないと見につかない感覚」を掴む機会が多かったと言えると思います。


 それに対して先ほどの育成選手の例はその「経験」が少ないのです。なのに、一気に伸びている。この「伸びる速度の速さ」こそがまさに「センス」なんです。


 そう、「半センス」と言っているのはそういうことなんです。


 たしかに「センス」だけでは絶対に覆りません。投手をはじめたてのころはエースをずっとやっていた選手には劣っていたでしょう。


 しかし、伸びしろはどうでしょうか。長らくやっているピッチャーはもう「そこが伸びしろ」の可能性が高いです。


 後はプロの体になって、水に慣れてという「他の選手でもありえる成長幅」しかない可能性がある(もちろん違う可能性も有ります)。


 ところが、高校から投手をはじめて、めきめきと伸びた選手はどうでしょうか。これは「センス」が高い可能性がある。


 そうなると、最終到達地点は(今はプロレベルになくても)一軍の選手という可能性が十分にある。だから育成選手として取って、鍛える。


 実際、上で挙げた二球団の「育成から支配下への登録率」は多分高いはずです。つまりはそういう「伸びしろ」である「センス」を見極めている、と言えるのです。

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