3.「非センス」ってなんだ?
さて、ここまでは「センス」と「半センス」について書いてきました。残っているのは「非センス」。ありていに言えば「誰でも一定までは絶対伸ばせる部分」です。
野球で例えていくのであればこれは「体の強化」です。
例えばプロ入りしてまもない投手が、二軍で登板すらしないということがたまにあります。これはまさに「体を作っている」ということに他なりません。
要はまず体を作って(非センス)、それから実戦経験をつんで(半センス)、最後に指導をする(センス)というプロセスを経るのだと思います。非常に論理的で、いい育成方法ではないかと思います。
もちろん、「半センス」の登板機会を多く与えるというのもいいことだと思います。まず「センスでしかどうにもならない部分以外」を扱うというのは、この三要素の特性からすると実に理にかなっているのです。
この「非センス」。実は非常に厄介なのです。何故なのかというとこれ、「受験勉強」で一番必要になる部分だからなのです。
例えば暗記。これに関しては正直、センスはあまり要りません。
もちろん、個々人にとって覚えやすい方法もありますし、暗記が得意な人も確かにいます。ただ、やったらやっただけの成果が出る。
どれだけ時間がかかっていようとも最終的に「試験で点数が取れる水準」に達すれば問題ないのです。
そして、困ったことに、大学あたりから、この「非センス」以外の「センス」や「半センス」に近い部分を求められます。
もっと言えば恐らく「就職活動」は「半センス」に近いです。つまり「受験勉強で培ったはずのもの」が役に立たない機会が増えてくるんです。
その上で、さらに困ったことに優れた商品を生み出すという所謂「アイデア」の部分なんかは「センス」が非常に重要となります。
それを実際に実現可能にしていくというプロセスはありますが、その前の叩き台として、「実現不可能かもしれないけど……」というアイデアがかならずある。それを作るのはやっぱり「センス」なのです。
こうやって書いていくと、所謂クリエイティブな部分にしか作用しないように見えるかもしれません。
けれど実際はそんなことは無いと思うんです。
皆さんは覚えがないでしょうか?「学歴も良くって、本来滅茶苦茶頭がいいはずなのに、素人考えでもおかしいと一瞬で分かることをしてしまう組織の重役的な人」を。あれがまさにその「センス」だけが弱い人なんです。
学生時代は「非センス」の積み重ねでなんとかしていて、それより上は「半センス」……つまり、効率は悪いかもしれないけど、数の積み重ねで何とか出来てしまう。
そう。世の「偉い立ち位置の人」って割と「センス」だけは欠けてても何とか出来ちゃうんです。
だけど、何かを生み出す場合必ず「センス」と「半センス」と「非センス」が必要になります。
「センス」以外を重視してふるいにかけた結果、「センス」は特にないのに、「センスが滅茶苦茶要求される立ち位置」に立ってしまっている。
そういう人が「頭がいいはずなのになぁ」という行動をするのではないかと思うのです。
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