陰謀論とライトノベルは似たところがある。どちらも、キャッチーなワードと、よく出来たファンタジー設定が力を持つ。二つの違いは、フィクションを楽しむ教養の有無だろうか。個人的には、陰謀論は厨二病というワクチンを接種しなかった人間がかかる麻疹の一種だと思っている。勿論、異論はあろう。
本作はよくあるテーマだが、だからこそ面白く描く作者の地力が光って見える。陰謀論の展示会のような内容はある種の2次創作的な要素があり、知っている人間は用語の使い方の上手さにニヤリとさせられる。知らない方は、それはそれで新鮮で、読みながら元ネタを調べる楽しみが残されていて羨ましい。
センシティブな内容を露悪的に書くのは簡単だが、本作はシリアスとユーモアを絶妙なバランスで描いており、怖い先生の授業中にこっそりふざけ合うような、そんなギリギリのスリル感も心地よい。
褒める点は非常に多いが、実際に読んで頂くのが一番であろう。私としては、ジップロックの下りにリアリティーと滑稽さを感じて、素晴らしいセンスだと感心させられた。思わず長文のレビューを書いてしまう、楽しい短編をありがとうございます。