第8話 授業中
3時間目に差し掛かり、空腹と眠気が僕を支配しようとしていた。
この時間が終われば昼食だというのに科学の授業は空腹よりも、眠気を誘う。
先生の声は小さく弱く、まるでBGMかのように聞こえて仕方がなかった。
科学の授業に関して言えば、教室の半数の男たちが寝息を立てている。
優等生になりたいわけでもないが、授業中に寝ることはなるべく避けてきた僕はこの時間だけは寝たい気持ちだった。
かのいう後ろの席からは寝息が聞こえてくる。
どうやら健は睡魔に敗北した一人の様だ。
同じ運命をたどるのも何か癪なので、僕は気を紛らわせるため、寝ることの次くらいにしてはいけない、スマホを隠れていじり始めた。
というのも起きている生徒の大半がスマホをいじっているからだ。
SNSでやりとりをしているもの。ゲームをしているもの。
スマホを持てばやることなどほとんど一緒だ。
僕は、やることもないがスマホを開くと、先日寝落ちしてから開いてなかった出会い系サイトを開いた。
そういえばなんて送ったっけと、確認する。
そこに書かれたことに驚愕した。
まず、二回ほどやりとりしていた。
一回目で僕は何を血迷ったのか。脈絡もなく『付き会わない』と送っていた。
本当に何を考えていたのか、あの時の僕の行動は常軌を逸していた。
突然付き合わないと送られた相手は、無視するかごめんなさいと断りをいれるだろう。しかし、相手もおかしかった。なにがおかしいかといえば、僕の予想している行動とは違うことをしていたからだ。
そう、返信にはこう書かれていた。
突然のことで驚いてます。
でも、私でよければお願いいたします。
と短文で返ってきていたのだ。
驚きながらオッケーです、と返事が返ってきていた。
突然付き合わないと送る僕もたいがいだが、そんなメッセージを送られてオッケーする相手もおかしい。
僕はこの時気が付いた。
会ったこともない顔もしらない相手と付き合うことになったこと。
そしてそれは、彼女ができたことを意味していた。
人生初めての彼女。
まるで実感もわかない。
そしてうれしさもこみあげてはこなかった。
恋人ができるというのは、こんなにも気持ちが高揚しないものなのか。
僕は、空を眺めながら考える。
空は青空が広がり、雲がゆっくりと過ぎていく。
まだこの空を見ているほうが、何か感じるものがあるように思う。
そんなことをふと思いふける。
見える恋には興味がない 晴樹 @iaritelikke
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