第7話 学校

妹過ごした時間はあっけなく終わりを告げて、日常に戻った。

僕は学校に向かう坂道を上り、汗を流しながら教室に入る。

そこには生徒たちがほぼみな集まった状態。朝から和気あいあいとして活気づいている。ちなみに男しかいないので、むさ苦しいことこの上ない。

女の子でもいればこの空気感も少しは変化を起こすかもしれないが、そんなことは絶対にありえない。

僕は窓際の後ろから二番目の席に座った。

そこに後ろの席の健が話しかけてきた。


「おう、俊。おはようさん。今日も暑いね」

「おはよう。そうだな」


といつもの会話をする。

朝はおはようという固定文を作った日本人は偉いと思う。

なんたって用事がなくても、誰かと会話というコミュニケーションを取ることができるのだから、言葉の力は偉大で感心する。


「それで、俊。出会えたか?」

「そんな簡単に出会えたら苦労しない。まあ、サクラっぽい女とはやり取りしているがな」

「そうなのか?あれでも、確かサクラはいないって話だぞ、その出会い系には。口コミもそれだからいいと書かれてるし。サクラじゃないんじゃないか、その子?」

「サクラがいない出会い系などあるはずないだろう。いないっていう口コミを書いてるのはサクラ本人だぞ」

「お前、出会い系のプロみたいなこというな……」

「そ、そんなんじゃねぇ!」


という無意味な会話をくり広げて、朝のチャイムがなる。

担任がそのチャイムが鳴るのを待っていたかのように、同時に入ってくる。

教師だからといってそこまできっちりしなくてもいいと再三思っているが、どうも真面目系の担任のようで、時間にきっちりしている。

女子がいれば、一人ぐらい好きと言ってくる女子がいたかもしれないが、残念ながら男子校であるこの学校ではあり得る話ではなかった。

そう、僕も共学ならば彼女の一人や二人いたかも……な。

家からものすごく近いからという理由で何も考えずに入ったら、こうなっていた。

話は戻るが、実はこの担任は嫌いじゃない。どうしてかといわれれば、ここが男子だからだろうか。ほかの教師人は体育系の脳みそまで筋肉のやつばかりで、精神論やよくわからない情熱論で無理強いを強いてくる。

インドアで運動とは対極に位置する僕には、刺さらないし強引な所がどうも生理的に受け付けない。

ほんとどうしてこの学校にしたのか。どうしてあの時よく調べてよく考えて入らなかったのか当時の僕を𠮟りつけたいくらいだ。


「それでは、朝のホームルームを始めます」

低い声の担任、新垣の挨拶から授業が始まった。

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