第6話 朝
真夏に差し掛かろうとしている7月中旬。
朝でも30度になろうかという気温で、むしむしとしている。
そんな夏の朝。僕の部屋は昨日の夜につけたエアコンのおかげで快適な温度を継続的に保ってくれていた。そのため、夏の朝でも爽快な目覚めをすることができた。
気分よく上体を起こすと、伸びをする。
そんな心地の良い朝で、バタバタという足音が聞こえてくる。
「お兄ちゃん! 朝だよ!!」
「あぁ、起きてるよ」
「あ、起きてるんだ。珍し。てか、涼し!!」
と朝からエアコンの効いた兄の部屋に驚いていた。
これが兄の特権だ。
と言いたいが、親にバレると怒られそうなのは言わずもがな。
僕と妹は1階に降りて身支度を始める。
朝ごはん、歯磨き、トイレを済ませる。
そして再び自室に戻り、着替えをする。
これがいつもの流れだった。
「よし、完璧だな」
と自室の姿見の前でネクタイを締める。
最初はなれなかったが、今ではある程度適当にやってもネクタイを締められるようになった。
これで社会人になってもネクタイを親に締めてもらう情けない男にはならずに済みそうだ。
部屋の掛け時計をみて、まだ30分以上余裕があることを確認する。
僕の部屋の真ん中にちゃぶ台があるので、そこに腰を下ろしてゆっくりすることにした。
よっこらっせ。
「お兄ちゃん、ネクタイを締めるのうまくなったね」
「そうだろ、もう二年生だからな」
「最初はお母さんにしてもらってたのに」
「最初はしかたないだろう」
「そういうもんかな」
「そういうもんだ」
「……」
「…………」
「どうしてお前が俺の部屋にいる?」
ちゃぶ台を囲むように僕と妹は座っていた。
こいつは朝からの兄の部屋で何くつろいでるんだ。
と思いながら、妹は静かに座っている。
朝の時間を持て余すかのように。
「この部屋が一番涼しいから」
「それはそうかもしれないけど、自分の部屋でエアコンつければいいだろ」
「そんなのしたらお母さんに怒られるもん」
「バレなきゃ大丈夫だろう」
「バレるもんたぶん」
と弱音を吐きながら、兄の部屋で横になり始めた。
寝る気じゃないだろうな。
僕は、時間が来るまで動きそうのない妹を無視して、スマホを触り始めた。
すると妹は、スマホを触り始めた僕を見て、飛び起きた。
「そうだ、youtube見ようよ」
「なんでだよ」
「いいじゃん、見ようよ」
「はぁ、仕方ないな」
「やった」
妹は喜びながら、僕のスマホで動画を再生し始めた。
今はやりの動画クリエイターの動画を二人で見る。
これもスマホも買ってもらえずに、パソコンもない家ではネットにつなげて動画をみるのは簡単ではない。
さすがに妹のことを考えると、僕もそうだったように触れる貴重な時間は触らせてあげたくなる。
まぁ、たまにはいいか。
朝の30分間僕は妹と、動画を見て過ごした。
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