第2話 夜逃げに注意
件のラーメン屋のラーメンは、クソ不味くはなかった。むしろ美味い。
中国人が経営しているのか、メニューは全て中国語。本格中華から日本人に大人気の海老ラーメンまで様々あった。
この店には姉妹店があり、姉妹店のほうが先にオープン。件の店は、あとからオープン。
どちらの店も美味いので繁盛しており、潰れる心配をせずに安心して海老ラーメンを食べることができた。
地元で食べられる海老ラーメンのなかでは最高に美味かった。
プリプリでかい海老がゴロゴロと入っていて、歯応え抜群。ざく切りの白菜やほうれん草、キクラゲなどの具材もたっぷり。
ベーコンなどの余計な具材が入っていないから、なかなか出汁をとるのが難しいと言われる海老の風味も、けっこうしっかりと味わえた。
幼い頃から好きだった、件の店の海老ラーメン。いつも混んでいるから、潰れる心配など全くしていなかった。
これからもずっと食べられると思っていたのに、別れは予期せず訪れた。
姉妹店の店主と同時に、件の店の店主が夜逃げをした。
ディスプレイから備品、昨日の生ゴミまでそのままで、店主は消えた。
夜逃げ!
なんだよ株でもやって失敗したのかよ!
おまけに姉妹店の店主まで同時に夜逃げとかさ!
いったい、なにがあったのだろう。
私は件の店がなくなってから、色んな店の海老ラーメンを食べた。
海老の味を邪魔するベーコンが入っている。よく洗っていない薬品の味がするたけのこが入っている。海老が小さい。歯応えがない。野菜が少ない。麺が伸びている。
どれもこれもクソ不味いんよ!
あの海老ラーメンが食べたい。夜逃げ味の海老ラーメンが、恋しい……。
このラーメン、クソ不味いんよ! various(零下) @2047
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。このラーメン、クソ不味いんよ!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます