このラーメン、クソ不味いんよ!

various(零下)

第1話 この醤油ラーメン、味がしねえ

 とある街に立ち寄ったときに食べたラーメンの話。

 味がしねえ──。


 とある街の、とあるラーメン屋の話である。

 店の扉をガラガラと開けると、客がいっぱい。昼時だったこともあり、大変な賑わいだ。厨房にも人がいっぱい。


 うーん。混んでるなぁ。待つのは嫌だなぁ。

 そう思いながらも、このラーメン屋でラーメンを食べることにした。

 何故かというと、この街には不思議なほどに食事処がないのだ。

 ラーメン屋も定食屋も、蕎麦屋も寿司屋も、カレー屋もパスタ屋もない。ファミレスすらない。


 この街の住人は、いったいどこで外食をするのだろうか。

 そうか、分かった。このラーメン屋で食事するのか。


 少し待とうと連れと一緒に壁に寄りかかっていたら、店員が一つのテーブルを指して、一言。

「相席でよかったら、すぐに座れますよ。あちらのテーブルへどうぞ」

 いや、こちらは返事をしていないし、指されたテーブルで食事をしている家族連れに了解も得てない。

「どうぞ」と言われても気まずいのだけれど、再度、店員から「どうぞ」と声を掛けられる。


 分かった。相席させていただこう。先客の家族連れに軽く挨拶をして腰を下すと、今度は、「やっぱり、あちらのカウンター席へどうぞ」と。

 なんやねん。仕方ない、移動だ。家族連れに会釈をしてカウンター席に移動するも、またしても移動。でもって、また移動。

 移動の繰り返しで注文ができん。これはタイミングが重要なヤツだ。

 横の椅子にスライドしながら、適当に醤油ラーメンの大盛りを注文。


 かなり待った。ちょっと意味が分からないくらい待った。

 たくさん待って、いよいよラーメン大盛りが目の前に来た。


 これは……素朴な醤油ラーメンだ!

 トッピングは、チャーシュー、ナルト、メンマ、焼き海苔。

 焼き海苔の上にコショウが載っている。なんで載っているのか。理由は分からないけど、とにかく載っている。


 よし、来た。やっと来た!

 ではでは、いただきます。


 大事なことだから、タイトルを含めて三回いう。

 味がしねえ。

 たまに、「味がしねえな」と思うラーメンに遭遇する。

 眼前にあるラーメンも、たまに遭遇する「味がしねえ系列」のラーメンだった。

 スープには醤油色が付いているが、味は、ほぼクリスタル○イザー。

 ちょっと意味が分からない。でも、醤油の味も出汁の味もしない。

 鼻は詰まっていない。鼻詰まりがどうこうという話じゃない。

 連れにラーメンの感想を聞くと、同じく、味がしないとのこと。


 見当違いかもしれないけれど、みんなで話し合って、一つの答が出た。

「味がしねえ系列」のラーメンは、ちゃんと出汁を取っていないんだろう。

 自分も同意見だった。スープも薄味は好きなんだけど、薄すぎて、ベースとなっている調味料の味が全然しない。


 結局、味がしたのは、トッピングの焼き海苔に載ったコショウだけ。

 海苔の中央がコショウ色になってる。

 めちゃくちゃ辛い。海苔の味は、なんとなく分かった。でも、コショウが辛すぎて食べられない。


 少し後にラーメンの猛者(大袈裟)に尋ねてみた。

 こういった醤油ラーメンを食べる場合は、まずはコショウが載った海苔をスープの中に入れ、箸で動かしてスープに味をつけ、それから食べるそう。


 本当か?

 海苔ジャブジャブが正しい食べ方かどうかは分からないけれど、でも、昔は、こういった感じのラーメンが主流だったんだそう。まあ、地域によって違うんだろうけど。


 そのときは海苔ジャブジャブを知らなかったから、味が全然わからないラーメンを水で流し込みながら食べた。大盛りを注文したことを後悔したが、そうは言っても残せない。

 連れも大盛りを頼んでいたので、二人で休み休みラーメンを食べた。


 ラーメンを食べ終わったとき、ラーメン屋に入ってから二時間近く経過していた。

 疲れた。ラーメンを食べるのに、こんなに疲れるとは思わなかった。

 口直しに食べたアイスが美味かった。


 一つ気になるのは、頭にタオルを巻いて腕を組んでポーズを決めた頑固オヤジのラーメン屋でも、たまに「味がしねえ系列」のラーメンが出てくる。

 地元の「味がしねえ系列」のラーメン屋は有名だから回避できるけど、出先だと回避が難しいよね。

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