30話 あれから(最終話)
30.あれから(最終話)
あれから、彩はいろいろな男と付き合った。
相変わらずきれいでスタイルの良い彩は、常に男から声をかけられる。
一夜限りの男、不倫、バツイチ、遊び人、生真面目など、しかしどれも長続きしなかった。
単に性欲だけで付き合った男もいるが、結婚を考えた男もいた。
しかし克己と過ごした6年間の結婚生活、どんなに想像してもそんな結婚生活を過ごせそうにない。そう思うとだんだん冷めてきて結局別れる。
それから、まともに付き合った男性はいなかった。
離婚してから10年、彩は兄の仕事を手伝っていた。
兄はイベント会場にあるフードコートの出店に等に関するコンサル会社を経営している。
会社と言っても20名程度のこじんまりしたもので、イベント主催側と出店希望の飲食店(業)相手の中を取り持ち、イベントを成功させるコンサルティングを行なっている。
ある時、イベントの前日に出店先の飲食店の店長から、スタッフが急病で人が確保できないので出店が難しい旨の連絡がきた。
このままでは穴が開いてしまうため、急遽 彩がその店舗の手伝いをする事でキャンセルを免れた。
イベント当日、お昼のピークを過ぎて、客足が安定してきたところ、これから閉店までパラパラ来るくらいでのんびりできる。
そう思ってため息をついて周りを見た。
何故か遠くから歩いてくる1組の家族が目についた。
全身全霊で夫を信頼し、夫と子供に愛情を注いでいる妻と、全身全霊で妻と子供に愛情をそそいでいる夫、2人からたっぷり愛情を受け取って育った女の子。
3人が満面の笑みをうかべ、楽しそうに歩いてくる、
3人から幸せのオーラが見えた。
何故か彩にはその家族がそう見えた。
だんだん近づいて、顔がはっきりしてくる。
かっちゃん? 自分がさんざん裏切った元夫。
隣にいるのは?裕子? 同期入社の影の薄い引っ込み思案の女子。
そして利発そうでとてもかわしらしい女の子、3人が笑みを浮かべ楽しそうに歩いてくる。
はっきりと確信した時「あ~~―――いや~―――」
回りに人達が振り向くくらい大きな声を出してその場に泣き崩れてしまった。
あの時、浮気せず、彼を真剣に愛し、周りの声に耳を傾け子供を作っていたら、
浮気して離婚されたとき、過ちを反省しずーっと彼を愛し、待ち続けていたら、
克己の隣にいたのは自分だった。
あの幸せの中に自分がいた。
それを・・・・。
始めて本当の後悔をした。
自分がいかに愚かだったかを知らされた。
始めて絶望を味わった。
それからしばらく立ち上がれなかった。
やっと立ち上がって回りを見たが、もうそこにはいなかった。
それから気が抜けたように、ただただ後片付けをして自宅に帰った。
そんな彩を見ても、両親も兄も、今までさんざん好き勝手した彩には、何かあったのかな?
まあいつもの事くらいにしか見えず、気にもせず、何も聞かなかった。
彩は抜け殻のように自分の部屋でぼーっとしていた。
うっすら涙を浮かべ、
「かっちゃん、幸せそうだね。よかった」
独り言をつぶやいた。
克己たち3人は 一瞬何か大きな声がしたので、そちらを見たが何もなかったので、そのまま通り過ぎて、イベントを楽しんで家に帰った。
「お父様、お母さま、今日はとても楽しかったです。」
「そうか、また来ような」
「うん」、「はい♡」
「あなた、いつもありがとう♡」
「ううん こちらこそ、裕子、本当にありがとう 愛してるよ♡」
END
浮気の先にあるもの 高梨克則 @takakatsu
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