鋏の使用時のみに現れる猫


そいつは鋏を使う時だけ現れる。

それも紙を切るときに使うような刃が開くタイプではなく、糸切り鋏のような小型のタイプを使う時だけ現れるのだ。


足先と胸元は白く、それ以外は黒い。

鼻筋にも白く一本線が入っている。

斬新でありながら、どこか親近感を覚える見た目をしていた。


私は刺繍を趣味としており、糸切り鋏を使う機会が多い。

地道に作品を作り続け、SNSに投稿して友達も増えた。


「君はどこから来たんだろうねえ」


今も露骨に嫌そうな表情を浮かべ、私の手元をじっと見つめている。

ちょっかいを出してくるわけでも、何かをねだるわけでもない。


試しに猫缶を置いてみたが無視された。好みではなかったのだろうか。

どこぞの横アリアーティストは美味しいと言っていたけれど、どうなのだろうか。


人間が食べている物とそう変わらないはずなのに、食べる勇気はまるで湧かない。

玄関にでも置いておいておけば、野良猫が食べてくれるだろうか。

困ったなあと思いつつ、糸切り鋏を片手に猫を撫でる。


両手が塞がっているので、写真を撮れないのがネックだ。

鋏を使っている時だけ現れる猫なんて、それこそSNSで話題に上がりそうだ。


次はこの猫でも作ってみようか。

特徴的な顔をしているから、すぐに作れそうだ。

そうしたら、いの一番に見せてあげようか。


私の手から離れ、興味なさそうに自由気ままに過ごしている。

気持ちよさそうに伸びをしていた。

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こんな猫、いませんでしたか? 長月瓦礫 @debrisbottle00

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