金星から降ってきた猫


星々がきらめく夜空に一閃が描かれた。

今日もまた、宇宙猫が飛来した。


「三回お願い事してもダメなんだってねー」


金太郎をなでながら、窓の向こうを見る。

おもちみたいにぐでーんと床で伸びている。


宇宙猫は地球に飛来してきた未確認生物だ。

隕石を調査しに来た研究員によれば、周辺に必ず猫がいた。

それも隕石の模様をした猫だ。


理由は分からないが、次々と地球へ飛んできた。

宇宙猫と誰かが呼び始め、今や一家に一匹いるとまで言われている。


彼らは地球産の猫と見た目は何ら変わらない。

毛並みがほんの少しだけ硬いだけで、何から何まで猫と同じだ。

ほうれん草のおひたしにのっているかつお節を盗み食いするところまで同じだった。


これだけ数が増えているにもかかわらず、宇宙猫についてほとんど分かっていない。


はるか遠い銀河系からやって来た宇宙人と専門家は言う。

惑星Xにて生まれた侵略者であると専門家は言う。

どれだけ議論を交わしても、答えは未だに出ていないのだ。


しかし、隕石の物質から誕生した惑星を特定することはできた。

その技術で惑星X生まれの猫はいないことが判明した。


話を聞いた人々は、宇宙猫を連れて専門機関へ向かった。

たちまち行列ができ、予約制へと切り替わった。


我が家にいる宇宙猫も検査してもらった。

金星から降ってきたことが判明し、金太郎と名付けた。

ブロンドヘアのような毛並みは特に関係ないらしい。


「お前は何なんだろーねー」


気持ちよさそうに喉を鳴らしている。自分の存在に興味はなさそうだ。

まあ、猫は猫だし。別にいいか。

窓の向こうの夜空にきらりと宇宙猫が瞬いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る