第4話

「まさ兄 今見た?めっちゃ可愛い子いたぞ。」

「俺思わず手をあげちゃった。又会いたいなぁ」


「おっ 優也珍しいな。お前が女に興味を持つなんて。そんなに可愛かったのか?」「今度は俺にも教えろよ。」


「まさ兄又この前の学校前行ってみようぜ。「又会えるかもしれねぇし」



優也と正樹が通った道に私立の中学があった。優也達が通った時校門前に一人の女の子が誰かを待っているようだった。優也自身声を掛けるつもりもなく見ていたが思わず手をあげていた。可愛いのはもちろんだが目が離せなかった。とはいえほんの一瞬だったのだが。心に留まっている。何故か又会いたい。と思ってしまった。優也には二度目だった。誰にも話してはいないがもう一度会いたいと思っている女の子がいるのだ。優也は気づいていないが・・・どちらも希だった。


変な気持ちでいる優也。何故かあの女の子のことが頭から離れない。何なんだ?一体?俺はどうしたんだろう?


何日か過ぎ優也と正樹はこの前の学校近くにいた。


「優也あの子がいたら教えろよ。」


「わかったよ。」


校門から生徒が出てくるのを見ていた。又あの子に会えるかも知れない。優也は落ち着かなかった。しばらく待っていたがあの子は出てこなかった。


「まさ兄、今日は帰ろうぜ、俺たち不審者だぜ。」

ずっと二人で校門前を見ていたのが他の生徒たちにはジロジロ見られていた。それもその筈。二人共真っ黒なヘルメットをかぶっているのだ。そして校門前をずっと見ているのだから。


二人共なんだか恥ずかしくなってその場を立ち去った。


何故あの子はいなかったのだろうか?既に帰った後だったのか?いやそのはずはない、俺たちは結構前からあそこに居たんだ。最初にでてきた子から見ていたはずだ。



その頃希は病院にいた。貧血がひどく学校を早退して病院に検査に来ていた。勿論爽真が入院している病院だ。母親が来る前に受付だけして希は爽真の部屋にいた。たまにしか人が入ってこない爽真の部屋。その間ずっと一人なのだ、付き添いはいない。この8年間症状は変わらない、希たちは病院の近くに引っ越したが毎日は来れない。ずっと付いていてあげたい気持ちは誰も同じだがそれができないのも現実だ。希は学校が近くだったので両親よりも来ている。なので看護婦さんとも友達になった。母親が来たので希は診察にいった。


優也は一人部屋で海を見ていた。最近はずっと正樹にくっついてバイクばかり見ていて海を眺めていなかった。優也はあの日から頭から離れない女の子の事を考えていた。あの日一度だけ見かけてからはずっと会えていなかった。何故そんなにも気になるのかが優也にもわからなかった。 久しぶりに浜辺に行ってみるか。優也は部屋を出た。まだ夏の賑わう頃ではないため浜辺は静かだった。海も穏やかだ。ゆっくり出来るな、と腰を下ろして周りを見た。優也は一瞬言葉を失った。居たのだ、毎日会いたいと思っていたあの子が。一人座り海を見ていた。優也は迷った 会いたいとは思っていたが実際にはどうしたいとか何もなかった。ただ会いたかったのだ。だが現実にそうなるとどうしていいものか迷う。とりあえず気づかれないように離れて座ったが気になるからチラチラ見てしまっていた。やはり視線は気づくものだ。希がこちらを向いた。優也の存在に気づいたのだ。優也は顔を下げた。急に恥ずかしくなった。だが優也は立ち上がりその子に近づいた。


「明瑛中の子だよね?」と話しかけた。「こんなとこで何してんの?」「学校は?」「一人?」「サボり?」優也は続けて話しかけたのだ。

希はちょっとびっくりしたが急に笑いだした。

「えっと、学校は明瑛です、今日は学校が終わって兄の病院の帰りです、学校帰りなので一人です。」「以上ですがまだ何か聞きますか?」と笑いながら言った。

急に我に返った優也は「あぁごめん、いや もういいよ」「あっ 俺覚えてないかな?」

希は不思議そうに見たがやはり笑ってしまった。「どこかで会いましたか?」「これってナンパですか?」

優也は慌てて「違う、違う 俺ナンパは一度もしたことない。誓って。」希はケラケラ笑った。「誰に誓ってるんですか?」もう優也の言葉が可笑しくて涙が出そうだった。

「私をどこかで見たんですか?」と今度は希が聞いてみた。


「一度だけ校門の前でな 一人誰かを待ってた。」希は考えあっと声を出した。

「もしかしてバイクの人?」

「そう 俺は後ろだったけど覚えてる?」

「はい 手を上げましたよね?私あれからずっと気になってて。」

「そう手を上げたんだ。ほんとに無意識だったけど。」

「無意識? 手をあげたことに意味はない?あれは私にではなかったんですか?」

「あぁ そう君に。君にあげたんだ。本当に無意識だったけど、君にあげたんだ。」「俺もあれからずっと気になってたんだ。なんでかはわっかんねぇけどよ。」「なんかすげ~懐かし思いがしてさ。」


希も同じだった。懐かしい思いがしていた。「私も気になってました。けどあれから見かけませんでしたよね?」「私バイクが通るたび見てたけど」


「そうなのか 気にしていたのか 俺この前、又学校近くに居たんだ。あの子に会えるかもって思ってさ。」

「えぇ~私見てませんよ、 あっ もしかしてあたしが早退した日かな 1日だけ早退して病院へ行ったんですよね タイミング悪かったですね。」

「なるほど、そう言う事か、待っても出てこないはずだ。ホントタイミングだな。」


二人して気になっていることを告白しあい なんとなく話しやすさをお互い感じていた。気になると言ってもまだこの二人に恋愛感情はうまれていない。気になるのは懐かしさだ。


「俺たちってやっぱ前に会ったことないのかな?」




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