第2話 新宿デート その1

 なんかキャラが違った気がしたけど……俺の気のせいか。リムルちゃんも緊張してたんだろうしな。うん。


「あ、見てムル!あそこのジュエリーショップ行きたいムル!」


 急にリムルがわざとらしいくらい大きな反応を見せた。


「えっ、あのジュエリーショップ?ま、まあいいけど」


  大きなターミナル駅ということもあって新宿は待ち合わせがしやすく、俺も何度もデートに使ったことがある。他にディーコネを使っている奴らもよく見かけるし、所謂デートスポットというやつだろう。

 新宿という街はなんでもあるように見えて、意外と女の子の好きなスポットは少ない。というのも、デートに行くたびに今リムルが行きたいと言ったジュエリーショップは必ずと言っていいほど行きたいと言われるスポットなのだ。


「わ、わあ、綺麗なジュエリーがいっぱいムル〜」


 感動、というよりは無理くり驚いている印象があるのだが、本人が行きたいと言ったのだからこれも緊張によるものだろう。今までもそれに近い反応をした子もいたしな。デート猛者の俺を甘く見てもらっては困る。


「プレゼントをお探しですか?」


 店員のお姉さんが話しかけてくる。ディーコネをやっているやつも増えて店員も普通にカップルとしての扱いで対応してくる。ちなみにディーコネ中に買った商品は画面の向こうの本人にも届けられる仕組みっぽいのだが、その辺は企業秘密らしく詳しく教えてはもらえない。ただ、女の子によっては買ったものをデータに落とし込んで、アバターがそれを着てくれたりするみたいだ。


「こちらなんかお似合いになると思いますよ」


 店員がシンプルなハートのネックレスを勧めてくる。値段は……24000円。学生の俺にはまあまあいいお値段だ。だが値段じゃない。こういう時の俺の答えはあらかじめ決まっているのだ。恋や愛はお金で決まるものじゃない。こんなもの買わなくたって本当に相手を大切に思う気持ちの方が大事なのさ。逆に気持ちをお金で買うみたいで俺は嫌だ。だから帰ろう、と。今日も目先のアクセサリーに舞い上がり気味の女の子にそれを言おうとしたのだが、いつもの女の子のようにはしゃいだ感じがしない。リムルの反応は……、ん、リムル?


「…………」

「……リムルちゃん?」

「こ、こっちがいいムル」


 リムルが指定した方のネックレスを見る。店員が勧めたものより、キラキラしているな。確かにこっちの方がゴージャスな感じがある。でもな、リムル。どんな物を選んでも人間、金じゃないんだぜ。ちなみに値段は、はちまんえ…ん、ん、800000円!?はちじゅうまんえん!おぎゃーーーー!


「でんゔぉsのいd」


 やべ、リアルに変な声出た。


「でも、ちょっと高いんじゃないかな?」


 いや、高すぎだろ。


「お嬢様はこちらがお気に入りになられましたか?」


 ちょっと、ちょっと店員さんも空気読んでよ。どう見ても俺の反応払えない人でしょ。


「こ、これがいいムル」


 ないのな。


「いま、手持ちがあまりないので」


 よーし、ナイス俺。金がないわけじゃなくて、あくまでも今はタイミングが悪いことを強調して、カッコよさをキープするんだ。


「分割でのご購入でも可能ですよ」


 おーーん。その手があったか。カウンターでKO。


「買ってくれるムル?」


 追い討ちをかけてくるリムル。ちょっと待てよ、話を元に戻そう。そもそも買うつもりなんかねーんだ。


「いや、そういう問題じゃなくて。なあ、リムルちゃん。気持ちって物で釣るものとかじゃないから。君のことが本当に大事だから俺は、買いたくない」


 よーし、俺のペースに戻したぞ。百戦錬磨のデート王を舐めるなよ。


「げっ」


 ん?

 今の声、誰?リムル?なんか、すげー雑な声だったけど。


「…………ムル」


 取り繕ったーーーーーーー!!!!!!

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リムル〜VRな彼女〜 @ramirami

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