六種:無意識に振り回される病弱革命家


 「概要」

 六種は全体癖の中でもかなりややこしい性格をしているのですが、その根本は呼吸器が弱いということにあると私は考えています。鬱屈したエネルギーを、本当なら五種のように行動して発散したいのに、運動でバテやすい六種にはそれがかないません。そこで行動したいのにできないことが空想となって、その空想(あるいは神秘の世界)に生きることが多くなるのが六種です。その結果、自分の理想と現実が極端に離れて苦労することもしばしば。だからこそ理想と現実の穴埋めをしようとして、行動の代わりに多弁・雄弁になります。

 時にその鬱屈した感情が限界に近づくと、突発的にヒステリーを起こしたり暴れたりして発散するので、普段は比較的大人しい六種が、この時ばかりは恐ろしいほどの行動的になります。

 ちなみに理想化というのは一種に似ているようにも思えますが、一種が好きなのは「理論化や抽象化」など、あくまで現実に足をついた思考ですから、現実を遠ざけて考えるといった具合なのです。でも六種はそもそも夢と現実の区別すらつかなくなったりするので、夢想家なのです。



 「身体的な特徴」

 五種とは反対に呼吸器が弱いので、胸は薄くて巻き肩です。肺結核患者は透き通るように肌が白くなるために十九世紀英国のビクトリア朝では美の対象とされていたように、呼吸器が弱い六種は若干不健康ともいえるくらい白いのです。顔に関しては顎先が出っ張って前に出ていて、横顔が三日月のようになっています。また首の頸椎は通常少し沿っているのですが、六種の場合は反りが悪く、首が前に落ちています。

 全体を見るとすらりとして背が高く、猫背が目立つというのが一番見てわかりやすいです。


 六種は呼吸器が弱く、少し肩に力がこもっていて前のめりという特徴があります。ただ呼吸器が弱いというのをもっと掘り下げると、これは猫背になることで骨盤が後ろに傾き、それに伴って生じる胸の緊張状態と、過呼吸(過換気)の状態によるものです。例えば普通の人であれば風邪を引いた時などにこういう姿勢になるのですが、六種は常にこのような、普通であれば体調が悪そうな姿勢です。

 呼吸器が弱いということに関連付けて言うと、五種六種の前後型は「損得」が軸で、では六種は何に対して打算的かといえば、エネルギーでしょう。あまり効率よく酸素を吸収できないがゆえに、六種はエネルギーを派手に消耗しません。無意識で無駄な行動を割けてしまう。だから意識してもできない行動が出てくるのではないでしょうか。

 それに加えて体力がなくなったり疲労したりすると肋骨の筋肉が緩んで息を吸えなくなります。五種はその反対なので疲れると鬱憤晴らしに運動するのですが、六種には到底そんなことできません。また首が前に置ているうえに付かれると胸がさらに張るので、なにやら大きなハンガーで体ごと吊るされているような姿勢になります。


 また呼吸器が悪いということは当然生命に必要なエネルギー源の酸素が足りなくなることにつながるので、それを補うためにたくさん食べます。三種もたくさん食べますが、あれは単に好みであり、楽しく食べているのですが、六種の場合は命の危険を感じて、食べなければ死ぬという強迫感のようなものをもって食べます。人によっては貪りつくように食べるでしょう。




 「心理的な特徴」

 五種であれば動くだけで発散できるストレスが解消できないのは、もちろん六種の呼吸器の問題もあるのですが、それと共に彼らは行動しようとすると肩に力がはいり、逆に行動するべき時には抜けてしまうからという理由もあります。もっと言えば自分ではやりたくないことを体がしてしまい、やろうと思うことはうまくできないという天邪鬼な体です。高潮したとき、緊張時には脱力するので、目の前にいきなりナイフを突きつけられたら普通であれば「ギャン!」と飛び跳ねて逃げていくでしょうが、六種は逃げようとしても咄嗟には体が脱力してうまく動けません。あるいは街頭でいきなりティッシュを差し出されたとして、六種はそれが欲しくても欲しくなくても瞬時にもらうことができません。だから何か指導を受けると思うようにできなくて、双方とても困ります。先生が欠点を見つけて「ほらもっと○○しなさい!」と言われるとそれが一気に癖みたいになって、意識では直そうとしてるのにいざやろうとする途端に無意識が勝って、やろうとしないことが表に出てくるのです。


 リスカなども六種がしやすいと私は思っていて、というのも六種は心の不調が極限に近づくとそれを発散しようとします。すると自傷をして、「自分はこんなに哀れなの」と他人の注意を引きます。でも人にちょっとやさしくされただけではたいていの場合まだ鬱憤が発散しきれてないので、傷が治り始めるとまた切る。ですから六種と付き合う場合はその人が求めている助けを明確に見極めるとうまくいきます。リスカの場合も、本当に手首の傷が痛くて、一過性の過ちを公開していることを相談しているのか、はたまた「かわいそうな私をかまって!」という意図で相談しているのかが分かれ目です。まあリスカなどになってくると大体後者なので、きちんとかまってあげましょう。そうでないと究極、その六種は死んで憂さ晴らしをしますから。

 なお、上のように鬱屈したエネルギーを解消できないとなると最後はヒステリーに至りますが、それまでは全てを我慢しているのです。六種は忍耐力があるということでもないのに、無意識がそれを強いるのですから、心に大きな負担がかかります。また、責任とかきつい仕事とかも無意識に抱え込むので、かなり心を壊しやすい体質であるといえます。大鬱病になりやすい人の特徴というのをネットで調べれば、大体が六種的か二種的、あるいは四種です。鬱で自殺してしまうのも四種をはじめとしてそれらが多いと感じています。そうそう、精神疾患で言えば統合失調症もかなり六種に頻発します。私の知り合いにも罹っている六種の人がいます。

 六種は言い換えれば何でもかんでも「溜め込む」ので、知識も責任も鬱憤も良きも悪きもすべて心にそのままあります。だからもしそのしこりが感情での爆発――ヒステリーにならなければ創造性に爆発して、素晴らしい芸術作品を作ったり、あるいは大胆さが行動に現れれば、カリスマとなることでしょう。


 六種は呼吸器が弱く空気に敏感ですが、その空気というのは「空気を読め」の空気、つまり雰囲気でもあって、世の中の流れが極端になって空気の密度が高くなると、無意識それを中和しようとして大局に逆らう動きをします。例えば戦争中は国民の多くがその流れに乗って五種とか七種みたいになって熱狂しますが、六種はその空気が息苦しいので反戦を唱えたり、ヒッピーのように放浪したりします。

 無意識とかヒッピーとかヒステリーというワードがある通り、六種は神秘に惹かれます。というか無意識に、宗教的な観点とか理論ではどうしても対処できない方向に傾くのです。まあ一種のように理詰めというのは頭のエネルギーを使いますから、理詰めもできないけど行動もあまりできないということで、宗教的な感受性を強めているのだと思われます。

 

 六種に関する情報を集めているとヒッピーとか宗教的とか言うワードもそうですが、どことなくスピリチュアル的なものに惹かれるという説明に出逢います。これに関しても理由があって、というのも身体的な特徴で言ったように、六種は常に胸の緊張があって気味になっています。呼吸器の弱さを補おうとしているのでしょう。これはエネルギーを溜め込むことにつながるので、それゆえ六種の人は無意識にも意識的にもストレスを発散することが難しいのです。さらに言うと、ヨーガやイスラーム神秘主義のスーフィーなどが行うトランス状態を引き起こす技法は、だいたいこの過呼吸で酸素を減らし、身体を危機状態にさらすことで頭と体を以上に興奮させるもので、六種は常にこのトランスに近い状態となっていて、鬱屈しているとその一歩手前まで来ているということになります。だからこそふとした時に幻覚が見えたり、神秘体験をしてしまうことによってスピリチュアルへ傾倒するのではないかと推測しています。

 六種がこうして神秘体験やドラッグなどに出逢ってしまうとすぐ中毒になりがちなのもやはり、六種の体質にぴったりフィットしているからです。あるいは別の見方をすれば、六種とドラッグ・嗜好品というのは非常に相性がいいのです。非日常で爆発的にストレスを発散するというのはまさに六種が生きていくのに必要不可欠なものですから、体でそれができない六種はそれを代替してくれるものに頼るのが最も手っ取り早いことになります。反対にそれがないとまた鬱屈した、暗いもやもやに支配される生活が待っているので、そうした依存物質に手を出してしまうのです。適度に用いれば、六種ほど嗜好品の恩恵をあずかれる体癖というのもないでしょう。



 「キャラ造形」

 六種は憂さ晴らしの不器用さという点で、どこか精神を病んだキャラとしての印象が強いです。なのでSNSで言う病みアカをやってる、いわゆるメンヘラキャラが正に六種的なのです。

 次いで夢想家という性格も物語としては大変面白く、もしこういう人物が権力を握ったり莫大な資金を得て、しかも世界の空気が息苦しいと感じるなどしたら、間違いなく世界を揺るがします。それは行動できないことのわだかまりによるものなので、たとえば両足が悪いとか、さらにそういうハンデを背負った六種は明らかに良くも悪くも世界を変えてしまう、いびつな革命家キャラとなりうるでしょう。

 また無意識がスピリチュアルに向かったり、あるいは世間の大局に逆らうという点で、世界を旅する放浪キャラというのも六種。ファンタジー世界でも、何やら暗くて厭世的な旅人というのはこれですね。現実であればやはりヒッピーのように、世俗を離れ、神秘体験や瞑想などにふけりながら放浪する人物が六種でしょう。

 さて、六種は分析をしても「やりたいことは上手くできずに、でもやりたくないことは無意識にやる」という非常に複雑な心理をしています。そういう面ではメンヘラ属性がなくとも、非常にミステリアスなキャラとなりうる。普段何を考えてるかわからないからちょっと近寄り難く、その上口を開くと熱い人なのに、鬱憤がたまった時にいろいろ爆発して大胆なことをやらかすのもいいですし、その心の弱さを親友や異性など、恋愛対象にだけ強烈に曝け出すのもなかなかギャップ萌えで、乙ではありませんか。わかる人にはわかるでしょうけど、太宰治とポーランドのフレデリック・ショパンはわかりやすく六種です。


 ちなみにものすごく六種だと思ったのが、数年前に公開された映画『JOKER』です。あれはとても六種的な映画でしたね。これについてはいろいろ言いたいことがあるので別の項でお伝えしますが、簡単に言えばまず主人公は顎先が前に出ていますし、妄想しがちです。それでいろいろ鬱憤がたまった時、普通の人ならしないような大胆な行動をする……。それが六種なのです。だから病弱革命家なのです。









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