声出したぬき
トマトも柄
第1話 声出したぬき
あるところにサーカスで働いてるたぬきがいました。
そのたぬきは一生懸命みんなと一緒に働いているのですが、たぬきは自分に自信を持てないでいました。
みんなは色々出来るのに僕は何も出来ていない。
そんな気持ちがたぬきの中にありました。
みんなはたぬきが一緒に頑張っているって事は分かっています。
そんな事はないとみんなが言っているのですが、たぬきは自信を持ってくれません。
たぬきが芸に出た時も色々してはいるのですが、声が小さくて観客に届かないのです。
たぬきは芸が終わった後にしょんぼりして帰っていきます。
サーカスのみんなもどうやったらたぬきが自信を持ってくれるのか分からずじまいでした。
みんなの芸が終わった後、たぬきはサーカス会場の掃除をしています。
そこで掃除をしている途中である物を見つけます。
一枚の紙が目に入ったのです。
それを拾うと、その紙には絵が描かれていました。
その絵はたぬきがお腹をぽんぽんと叩いて、周りのみんなが笑顔になっているという絵でした。
たぬきは掃除を終えるとみんなにその絵が知っているかどうかを確認しに行きました。
みんなのところへ向かうと、みんながある親子に対して困った表情をしていました。
「どうしたのですか?」
たぬきはみんなに聞きました。
「おぉ! たぬきか! この親子さんが落とし物したと言ってね。 みんなで探してるところなんだよ」
ライオンがたぬきの質問に答えています。
「何を落としたか聞いても良いでしょうか?」
たぬきは親子に聞いています。
「はい。 この子があなたの描いた絵を落としたんですよ。 この子が落としたの気付いてずっと泣いててね」
すると、親の後ろに隠れていた小さい男の子が顔を出しました。
「僕のたぬきの絵が見つからない」
男の子は目を真っ赤にして不安そうに声を出しています。
「もしかして、探してるのはこの絵かい?」
たぬきは男の子に先程見つけた絵を見せました。
すると、男の子は興奮した声を出し、
「これ! これ! 僕の描いたのだ! ありがとう! たぬきさん!」
男の子の反応を見て、たぬきは男の子に絵を渡しました。
「たぬきさん! ありがとう!」
「見つかって良かったよ」
たぬきは男の子に笑顔で返しました。
「ライオンさん。 落とし物は見つかったってみんなに連絡してくれますか。 今渡しましたので」
「そうか。 今から連絡するから少し親子さんの話相手になってくれないか? 連絡の行き違いになる可能性もあるからな」
「分かりました」
たぬきは親子の方に向き直り、話を始めました。
「この絵を見つけて下さってありがとうございます」
「いえいえ。 大丈夫ですよ。 お客様には笑顔で帰るようにして欲しいのでこういうのはお安い御用ですよ。 それにこの子、とても大切にしている絵なのですね。 僕の事そんなに気に入ってくれてるの?」
たぬきは男の子を見ます。
男の子はとても輝いた目でたぬきを見ています。
「たぬきさんだ! たぬきさんだ!」
男の子はたぬきを見て凄い喜んでいます。
「この子はいつもたぬきさんの応援をしているんですよ。 最近たぬきさんの元気が無いって言って僕が元気づけるんだって張り切っちゃって」
「そうでしたか。 やっぱり子供には分かるんですね。 ここ最近、少し自信が無くてですね」
それを聞いて、男の子がたぬきを指でつついて呼んでいます。
「これ! 受け取って!」
男の子は先程渡した絵をたぬきに渡そうとしています。
「え? けど、これって君の大切な絵なのでは?」
「たぬきさんに元気になって欲しいもん!」
そして、男の子はたぬきに大切にしてる絵を渡しました。
「ありがとう! 大切にするね」
たぬきは笑顔で受け取り、男の子から絵を貰いました。
たぬきは男の子から貰った絵を見ました。
そこではたぬきが元気よくお腹を叩いて、みんなを笑顔にしている絵でした。
それを見てたぬきは親子に話しかけました。
「すみません。 良かったらで良いのですが、又このサーカスに来てくれないでしょうか? お二人に是非見て貰いたいんです」
「分かりました。 では、都合の良い日を後日に伝えますね」
「ありがとうございます」
たぬきは頭を下げてお礼を言っています。
男の子は何が起こったのか分かってない様子でしたので男の子のお母さんが男の子に言いました。
「たぬきさんが私達に又近い内に見に来て欲しいみたいよ。 又近い内に来ましょうか」
「たぬきさんに近い内にまた会えるの!? やったー!」
そして喜んでるのを見ながら二人は笑顔になり、男の子の親子は頭を下げてからサーカスを後にします。
二人が立ち去るのを見送ってから、たぬきは絵を見ながらこう呟きました。
「僕を応援してくれてる子がいるんだ。 僕も頑張らないと」
たぬきは次の公演で頑張ることを決意しました。
数日後、たぬきは公演に出ます。
その公演には前に会った親子も見に来てくれているとの事でたぬきは気合が入っています。
そして、たぬきの出番が来ました。
たぬきは大勢のお客さんの前で芸を披露しようとします。
ただ、たぬきはとても緊張しており、足が震えあがってました。
(頑張らないと、けど足が震えてしまってる。 ここで芸をするの怖い)
たぬきはガチガチに固まってしまって動けないでいます。
「たぬきさん! 頑張って!」
すると、大声が響き渡りました。
前に会った男の子が叫んでいました。
(男の子があんなに一生懸命応援してくれているのに…僕もあの子の期待に応えるようにしないと!)
たぬきは自分の頬をパチンと叩き、自分に喝を入れます。
そして、たぬきは気合を入れて声を出しました。
「ぽんぽーん!」
公演は成功に終わりたぬき達は公演の後片付けに入ります。
「たぬき。 今日は良かったぞ!」
「ライオンさん! ありがとうございます!」
「あの男の子から勇気をもらったのかな?」
「はい! とっても!」
たぬきは後片付けが終わった後に自分の部屋に戻ります。
そこには額縁で丁寧に扱っている一枚の絵がありました。
そこの絵はたぬきの芸でみんなが笑顔になっている絵でした。
「よし! これを目指して頑張るぞ! みんなに笑顔になってもらうんだ!」
たぬきはこの絵に勇気を貰いました。
もう前の自信の無いたぬきはいません。
今のたぬきはとても自信に満ち溢れている顔をしています。
声出したぬき トマトも柄 @lazily
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