第5話 父さんからの手紙

 ワフアから、父さんから七実へ贈り物があると聞いて七実は嬉しくてワクワクする反面とってもビックリした。

もう亡くなったはずの父親がどうして自分に贈り物を残せるのだろう?と不思議でしょうがないのだ。

まだ少しこの状況に確信が持てない七実は恐る恐るワフアに言った。

「父さんはどうして私に贈り物を残したの?

ってか、どうやって残したの?それに贈り物って何!?」

少し焦っている様子の七実にワフアは優しくこう言った。

「そうだよね。もう生きてはいないはずの誠司が贈り物を残しているなんて、すごく不思議な事だよね。でもね七実。あなたの父さん、誠司は最後の最後まで七実のことを大切に思っていた。

突然お別れする事になって誠司はとても苦しそうだった。

だけど誠司は死を受け入れて、残り少ない時間の中で七実に手紙を書いたんだよ。

もちろん、その時は七実はまだ赤ちゃんだったから、もう少し大人になってから手紙を渡すようにって誠司から言われていたの。」

そう言われて七実はますます不思議に感じた。

一度に色んな事が起こり過ぎてすぐには自分の中で消化しきれない感じだった。

七実は恐る恐るワフアに聞いた。

「えーっと。何となく理解できたようなできてないような感じなんだけど、そしたらその手紙見てみたいな!」

七実はこの状況を頭でも心でも処理しきれなかったが、父さんが残した手紙があると聞いて、すごくワクワクドキドキした。

自分の記憶にほとんど残っていない父親と、お祖母ちゃんから聞いていた話で自分の中でイメージしている父親像がぼんやりあって、もしその手紙を読めば自分の中でモヤがかかった気分が少しでも晴れるのか…?

そんな複雑な思いが頭の中で交差していた。

そして七実はワフアに言った。

「正直、父さんの事で全然覚えて無くて、だからいまいち父さんの残した手紙って言われてもピンと来ないんだけど、手紙見たら何か父さんのことが少しでも分かるのかもね。」

ワフアは七実にそう言われて、少し表情を曇らせた。

そしてワフアは黙ってしまった。

七実はワフアのその表情から、父さんの手紙がすぐにはもらえないと言うことを察した。


-やっぱり…父さんとは二度と会えるわけがないし、記憶がない以上は元々私の中には父さんはいないと言う感覚すらあるのに、今更父さんの事を知ろうなんて、やっぱり無理なのかな…-


目に見えないものや確信が持てないものは不安定だから、もし上手くいかなくて愕然としたら…そして傷付いてしまったら、どうすれば良いんだろう?

最初から背を向けて諦めてしまった方が楽なんじゃないか…。


まだ、どうしてワフアがそんな顔をしているのか分かりもしないのに、一瞬にして七実はそんなネガティブな事を考えていた。


七実は父親の手紙を手にする事ができるのだろうか?

そして、そのための一歩を踏み出せるのだろうか?

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