2撃 特訓する!-2
放課後になりアツヤの家を訪れた。
「すげー、自分の部屋にテレビあるじゃん!」
初めて入室したアツヤの部屋は、ベッドと勉強机に椅子という簡素な部屋だ。テレビには既にゲーム画面が映し出されている。
「まあな。それじゃあ、早速やろうか」
二人とも座布団に座った。
「よっしゃっ、勝つからな!」
「勝ち負けとかより、特訓だろ?」
ネツヤは剣士キャラのアルトを、アツヤはサーニャルを選択した。試合は前日の大会のリプレイを見るかのようにあっさり勝負がついた。
「がっ、い、今のは指の運動しとこうかなってことだからな、次だよ、次!」
「ほー、なるほどな。準備体操ってところか」
「そ、そういうこと!こっからだ!」
そして、また負けた。
「おしっ、あったまってきた!次!」
その後十戦して全敗した。それも、あっという間に。
「うおおおーっ、なんで勝てねえんだ!」
「大会の時もやってたけど、ジャンプ攻撃のワンパターンな立ち回りだったら何回やっても一緒だって」
アツヤが半ば呆れたように笑った。
「おっかしいな。このやり方で負けたことねえのに。なんでアツヤには通用しねえんだ?」
首をひねって、コントローラーを見つめた。
「タフゲージ溜めるにしても吹っ飛ばすにしても、この着地を狩るゲームだからさあ。試合展開早くガンガン攻撃仕掛けていくのはいいけど、
「隙か……。ムズイな!」
満面の笑顔で言った。
「なんで嬉しそうなんだよ。負けすぎて頭おかしくなったのか?」
アツヤが引き気味に言った。
「だって、そんなこと考えてなかったから。そういうこと覚えて言ったら、まだまだ強くなれるって思うと嬉しくってさ!おしっ、今からが本番だ!これから秘密兵器を出す!」
ネツヤはサーニャルを選択した。
「秘密兵器ってサーニャルのことか?使えるのかよ?」
「ふふん、昨日大会でお前が使ってるの見て、こいつの強さがわかったからな!」
「ふむ、じゃあ俺はこいつにするか」
アツヤは魔法使いレインを選んだ。フードを目深に被り、杖から魔法を繰り出す遠距離攻撃に優れたキャラクターだ。
「サーニャル以外も使えるのか?」
「ああ、サーニャルは別に持ちキャラじゃないし」
「はあ?大会で使ってたのに?」
「サーニャルってお前が言ってた通り、弱いって思われてるからさ。まだ開拓が進んでない今だったらいけそうだなって思っただけだよ」
試合が始まるとレインはサーニャルから距離をとって、離れた位置から魔法で火の玉を勢いよく放ってくる。サーニャルはジャンプして避ける。
「しっかし、お前ってホントおもしろいよなあ」
「あん?なんもおもしいことなんて言ってねえじゃん」
サーニャルはジャンプで必死に火の玉を避け続けている。一回当たる程度なら大してタフゲージは溜まらないが、連続して当てられると一気に形勢が不利になる可能性があり、なかなか近づけない。
「昨日会った時からだけど言動がぶっとんでるからさあ。ゲームのガン攻めプレイスタイルもそうだけど、あんだけ騒いでたくせに俺に特訓申し込んできたり、そんな
アツヤは涼し気に火の玉を放つコマンドを入力している。
「よくわかんねーけど、バカにしてるな」
連続して放たれる火の玉のせいで、自由に身動きができないイライラで考えて答える間がない。コントローラを忙しく操作するので手一杯だ。
「してないって。俺がお前の年齢ぐらいの時に、大会に出ようなんて思わなかっただろうしその意気込みはすごいなって思うよ」
淡々と火の玉が放っているが、じわじわとサーニャルのジャンプのタイミングに合ってきている。
「さっきから、それずりいぞ!カズトっていうおれと一緒に大会出た友達が、大会あるって教えてくれたから、それで家から近いし力試しに出てみようって話になったんだよ。あっ!」
ジャンプしているサーニャルに火の玉が直撃して地面に落下した。落下したところに連続で火の玉をぶつけられてタフゲージが溜まっていく。さらに、火柱の魔法をサーニャルにぶつけられる。
「ぎゃっ!最悪だ!動けねえしダメージくらうし、どうやって抜け出すんだよ。この火柱!」
コントローラを適当にガチャガチャするが、タフゲージのたまった状態のサーニャルは火柱から脱出できない。レインが悠々と近づき、杖を振りかぶってこん棒代わりに殴りつけると、サーニャルは勢いよく場外に吹っ飛ばされた。
「くそっ!次こそ!」
今度はネツヤが魔法使いレインを選択し、アツヤはザンゾウを選んだ。額当てを装着しており顔のほとんどを紺色の布で覆い、切れ長な目元だけが見えている忍者のような風貌で、素早い動きと多様な技を使うのが特徴のキャラクターだ。
「俺も強い相手に戦いたいっていうのはあるなあ。でも、ネツヤは恵まれてるよ。一緒にやってくれる友達がいて」
さびしそうに言いながら、まきびしをばら撒き、レインの移動できる範囲をせばめる。立ち往生しているところに手裏剣や火薬玉を器用に投げ分け、遠距離からダメージの蓄積を狙っていく。
「しけた面すんなって!おれがこれからは遊んでやるから!」
ネツヤが大口をたたいた。レインの身動きを封じられ、遠距離攻撃でタフゲージも溜まる状況に、手の打ちようがなく内心あせっている。なんとか逆転しようとダメージをくらいながらもやみくもに火の玉を放つが、手裏剣に相殺されてしまいザンゾウにダメージを当てられない。
「ふっ、それだけのこと言うなら、せめて、遊びになるくらい強くなってくれよ」
火薬球が爆発して、レインの体が上空にあがる。
「あったまきたー!舐めたこと言ってられんのも今のうちだからな!」
言い終わるや否や、ザンゾウの飛び蹴りが空中で受け身の取れないレインを直撃し画面外へ吹っ飛んでいった。
「ぐあーっ!次!」
「うわっ、やばっ!早く帰らねえと!」
窓を見ると外はすっかり暗くなっている。あれから空腹も忘れて夢中でゲームをしてしまっていた。急いで玄関まで飛び出した。
「アツヤのウチはいいよなー。おれん家だったら、こんな時間までゲームやってたら怒鳴りつけられてるし」
靴の踏んづけたかかとを直しながら言った。
「うちの親は仕事命の人だから。まだ帰ってきてないだけだよ」
「そっか。じゃあ、また明日な!」
ネツヤは自転車に飛び乗り、振り向きもせずこぎ出した。結局特訓とはいえ一勝もできなかった。しかも、自分は全力でプレイしていたのに、アツヤは喋りながら
VSバースト~おれプロゲーマーになる!~ 青星青 @se1-se1-se1
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