第10話 アンタなんかいなければ
いくら浮かれていたとはいえ、そんな有名な企業の関係者と偶然会うだなんて、楽観的なことは考えていなかったけど、両親に話して電話したところ、本当に『BSJプロダクション』の関係者であると確認が取れた。
両親は、私がやりたいならやってもいいと、私に選択権を委ねてくれた。
この時の私は、アイドルになることについて、そこまで深く考えてはいなかった。
学校に行かない免罪符になるかもしれないし、辞めたかったらすぐやめればいいしと、そのスカウトを受けることにした。
スカウトを受け、私は研修生となった。
高校受験などもあって、周りと比べて遅れていたのか、暫くはレッスンばかりだったけれど、半年ほど経った後は、バックダンサーのようなものもして、少しずつ、人目に触れるようなこともし始めた。
それから、さらに半年ほど経ち、ようやくデビューの時期が決まった頃、『BSJプロダクション』の役員の脱税が発覚した。
私が高校1年の時だった。
クラスには、私が『BSJプロダクション』の研修生であったことは知られていた。
だから、同情してくる人もいたし、私を嫌いな人は喜んでいたと思う。
役員の不祥事なんて、関係ないと思っていたけれど、それによって、アイドルデビューは先送り。
代わりに、グラビアをやらないかと言われて、その事務所を辞めた。
辞めたことによって、更に私にいろいろ言ってくる人が増えたけど、どうでもよかった。
1年近く研修生としてアイドルデビューを目指して、特訓していた私だったから、その経験を無駄にするのはもったいないと、別の事務所を探し始めた。
そんな中、見つけたのが、今でも所属している『
新しく出来たところだから、入れれば周りの碌にレッスンも受けていないような人よりは目立つことが出来て、、すぐにデビューできるんじゃないか、なんて考えていた。
そういえば、えいかさんとななさんに初めて会ったのは、面接の時だったはず。
あったと言っても、面接のために待機していた数十人の中の一人というだけだったから、お互い認識はしていなかったと思う。
認知したのは、その後の顔合わせの時で、私、えいかさん、ななさんの3人だけが、面接を通ったみたいで、この3人でデビューするのだと思っていた。
『BSJプロダクション』でも、年上の人はいたけれど、同じグループのメンバーという近い関係になると考えて、少し戸惑った。
事務所を探していた期間は、体形を維持するためにジムに通っていたけれど、改めてレッスンを受け始めた時は、少しきつく感じた。
ななさんは、少し辛そうだったけど、えいかさんは最初から余裕そうだったのは覚えている。
それから、半年ほど経った時、プロジューサーから、大事な話があると呼び出された。
最初は、ついにデビューの日付が決まったのかと思ったが、現実はデビューではなく、新しいメンバーの追加だった。
ひめりさん、やよい、わこが入ってきた。
それからしばらくしても、なかなかデビューの連絡は来ないし、本当にデビューさせる気はあるのか、詐欺なのではないか、こんな出来立ての事務所に入ったのは間違えだったんじゃないか、と考えていた頃、私達のグループ名『NexsiS』とデビュー日が4月10日に決まった。
ようやく、デビュー出来るのかと、呆れつつも、心の底から嬉しく、珍しく両親に自分から報告したのを覚えている。
それにもかかわらず……『NexsiS』結成の1か月前になって……
(え……)
夢の中、私達は6人でデビューをしていた。
アイツは、いない。
「ソロ曲、ですか……?」
「ああ、そうだ」
夢の中のプロジューサーが私に対して提案している。
ソロ曲……ソロパートではなくて……?
「ファンからの要望は応えられる限り応えるべきだと、社長が決断したんだ」
「それは……うれしいです!」
夢の中の私は、涙を溜めながらも、満面の笑みを浮かべていた。
「負担は増えてしまうと思うんだが、やれるか?」
「私、頑張ります!」
そんな真っすぐなことを言っていた。
☆☆☆
『しふぉん! おはよ!』
『おはよう、○○』
教室に入れば、仲の良い友人と挨拶を交わしている。
『○○、今日は宿題ちゃんとやってきた?』
『え……? 宿題……あっ!? 英語の!!』
『また忘れたの?』
私の友達の○○が、机の横に掛けた鞄を慌ててあさっている。
『や、やばっ! ごめん、また貸して!』
『しかたないなぁ』
『あれー? ○○、またしふぉんに迷惑かけてるの~?』
『あっ、△△。おはよう』
『おはよ、しふぉん。いつも通りだね~』
いつも通り宿題を忘れていた○○が、授業前に何とか誤魔化そうと机にかじりつく様子を△△とからかっていた。
『あっ、しふぉんちゃん! 『★★★』買ったよ!』
『そうそう、ほら! 私も買った! かわいかった~』
□□と◇◇が、雑誌を私に向けている。
その表紙では、私が笑っている。
『ありがとう! でも、撮ってくれた人の腕が良かったんだよ~』
『謙遜は嫌味だぞ~?』
□□が私を抱きしめている。
私は、イヤそうな声を出しながらも、受け入れていた。
『しふぉんちゃん、今日も午後から撮影なんでしょ』
『うん、前に番組でお世話になった方が、推薦してくれたみたい』
『そういうこともあるんだ』
『じゃあ、午後のノート、私がとっとくね』
『◇◇、いいの?』
『いいよいいよ~、困った時はお互い様ってやつ』
暫くすると先生がやってきた。
○○は私の背中で先生の視線から隠れていた。
☆☆☆
【供養】美少女好きの美少女ちゃんが美少女アイドルグループに入って美少女に囲まれながら、美少女を眺めて楽しむ話。美少女多め! 皮以祝 @oue475869
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