7
遠く、ブランコや雲梯ではしゃぐ声を耳で聞きながら花壇を見つめる。授業で植えたチューリップは、なぜか芽が出てくれない。
「貸して」
前まわりしかしていないわたしに見飽きたのか、近くにいた知らない女の子が言う。
かまわずわたしはくるくるくるくる回る。
「ねえ」
貸してってなんだろうと思う。遊具をずっと遊ぶのは許されない。貸してって言わないと順番交代ができない。上級生が乗っていたら譲ってもらうのは勇気がいる。めんどくさい。この小さな世界で、そんなところに気を揉みたくない。
上り棒のてっぺんに登れたことはなかった。逆上がりも補助の板を蹴らないとできなかった。
雲梯は人気で、2個飛ばしでできる子はあがめられた。手に豆がいくつもできた。友達はできなかった。
ジャングルジムの唯一の一本道をくぐり抜けた。それだけで心が踊った。まだ赤くなっていない紅葉を見た。掃除をしていない汚いプールを遠くに見た。
誰かが作った泥団子が3つ置いてあった。雪だるまのように重ねようとしたらもろく崩れた。小さいアリを見た。手の三角形に閉じ込められたアリはかわいそうだった。腕を伝う小さなくすぐったさが心地よかった。チャイムがなるまでが遠く感じた。
今からしゃべるの禁止! ナノハナ @claririri
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