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 遠く、ブランコや雲梯ではしゃぐ声を耳で聞きながら花壇を見つめる。授業で植えたチューリップは、なぜか芽が出てくれない。

「貸して」

 前まわりしかしていないわたしに見飽きたのか、近くにいた知らない女の子が言う。

 かまわずわたしはくるくるくるくる回る。

「ねえ」

 

 貸してってなんだろうと思う。遊具をずっと遊ぶのは許されない。貸してって言わないと順番交代ができない。上級生が乗っていたら譲ってもらうのは勇気がいる。めんどくさい。この小さな世界で、そんなところに気を揉みたくない。

 上り棒のてっぺんに登れたことはなかった。逆上がりも補助の板を蹴らないとできなかった。

 雲梯は人気で、2個飛ばしでできる子はあがめられた。手に豆がいくつもできた。友達はできなかった。

 ジャングルジムの唯一の一本道をくぐり抜けた。それだけで心が踊った。まだ赤くなっていない紅葉を見た。掃除をしていない汚いプールを遠くに見た。

 誰かが作った泥団子が3つ置いてあった。雪だるまのように重ねようとしたらもろく崩れた。小さいアリを見た。手の三角形に閉じ込められたアリはかわいそうだった。腕を伝う小さなくすぐったさが心地よかった。チャイムがなるまでが遠く感じた。

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今からしゃべるの禁止! ナノハナ @claririri

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