ある日突然全人類の性別が逆転した件
水島紗鳥@11/22コミカライズ開始
ある日突然全人類の性別が逆転した件
ある朝俺がベッドの上で目を覚ますと体に大きな違和感を感じた。
なんと俺の視界には胸の辺りに見慣れない膨らみがあったのだ。
それに下半身にも違和感を感じてズボンに手を突っ込むと、本来そこにあるはずの息子が存在していなかった。
「なんだこれは!?」
そう叫び声をあげたところで更なる違和感を感じる。
俺の出したはずの声は普段聞きなれた低音ボイスではなく、全く聞き馴染みの無いまるで女の子のようなソプラノボイスだった。
状況を全く理解できない俺が一人で困惑していると、隣の部屋から突然大きな悲鳴が聞こえて来る。
それは若い男性のような声であり、隣の部屋には
「
自分の身に起きた異変の事などすっかりと頭から抜け、部屋の隅に置いてあった金属バットを手に取ると莉沙の部屋へ向かい始める。
今俺の頭の中は妹についた悪い虫を駆除する事でいっぱいとなっていた。
「莉沙大丈夫か!?」
莉沙の部屋に入ると下半身をむき出しにした見知らぬ男がベッドの上で悶えていた。
こいつは恐らく変態だろう、半殺しにしよう――そんな事を考えていると俺の存在に気付いた目の前の男は驚いたような表情となり声を上げる。
「ちょっと、あんた誰よ?なんでお兄ちゃんのパジャマを着てるのよ!?」
男のくせに女言葉を喋っているこいつは間違い無く変態だ、やっぱり殺そう――そう思っていると、聞き捨てならない単語に気付く。
「ん、お兄ちゃんのパジャマ?何言ってるんだよ、これは俺のパジャマだ!」
俺の言葉を聞いた男は明らかに困惑したような表情となる。
「……もしかしてお兄ちゃん?」
なに、お
鏡の中に映っていた俺の姿は誰がどう見ても女性だったのだ。
「これが俺……?」
バットを床に落としながら、俺は呆然とした表情でそう呟いた。
「やっぱりお兄ちゃんなのね。私だよ、莉沙だよ!」
先程までは頭に血が上っていて気付いていなかったが冷静になってみると、目の前に立つ男は姿や声こそ全く違うものの、喋り方が莉沙そのもので顔もどこか面影がある。
「……本当に莉沙なのか?」
自分の変わり果てた姿を見せられた事で信じる気になれた俺は、そう声をかけた。
すると莉沙はパンツとズボンを履き直すとヒステリックに声をあげ始める。
「そうだよ、莉沙だよ。朝起きたら下半身に違和感があってパンツを脱いだら見たことない何かが付いてるし、鏡を見たら男になってるしで、もう訳わかんないよ!?」
「と、とにかく病院に行こう。こんな体だと俺も莉沙も高校に行くどころじゃないしな!」
色々と信じられない事の連続でパニックになりかけている俺はそう提案すると、無理やり莉沙の手を引いて一階に降り始める。
父さんと母さんにどう説明しよう――そんな事を考えているとダイニングから全く聞き馴染みの無い男女の話し声が聞こえてきた。
嫌な予感がした俺は莉沙の手を引いたまま一気に扉を開けると、そこには見慣れない一組の男女がいたのだ。
「えっ、誰?」
「……お父さんとお母さんは?」
俺と莉沙が顔を見合わせてそう呟くと、話を中断した男女がこちらを向く。
「ひょっとして
「あなた達も性別が変わってしまったのね……」
「えっ……まさかお父さんとお母さんなの!?」
どうやら俺達の目の前に立つ二人は両親らしい。
この怪奇現象に巻き込まれたのは俺と莉沙だけじゃなかったようだ。
「僕達も朝起きたらこうなっていてね、どうしたらいいか分からなくて困ってたんだ……」
「それでこれからどうしようか……ってお父さんと話し合ってたのよ」
女の姿をしたお父さんと男の姿をしたお母さんは困り顔でそう話した。
流石のお父さんやお母さんでも突然性転換するなんて想定外だよな――そんな風に考えていると、莉沙がテレビの電源を入れ、そこで衝撃的な事実が判明する。
なんとこの現象はうちの家庭だけではなく、世界中で起こっていたのだ。
テレビの中では女物の服を身にまとった男性アナウンサーが、緊急の臨時ニュースとして今回の怪奇現象についてを報道しており、別のチャンネルに切り替えると内閣総理大臣と思わしき高齢女性が緊急事態宣言を発令し、更に別のチャンネルでは病院に押しかける人々の姿が映し出されるなど、とにかく大混乱となっている。
俺がスマホを取り出しインターネット掲示板や各種SNSを覗くと、この話題についての様々な書き込みが存在していたが、どれも情報が錯綜しているため信憑性は低いだろう。
一つはっきりしている情報としては、ある日突然全人類の性別が逆転したという、ただそれだけだった。
これから一体どうなるのかは、今はまだ誰にも分からない。
ある日突然全人類の性別が逆転した件 水島紗鳥@11/22コミカライズ開始 @Ash3104
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