第39話

「なに?」



「あんたをここから連れ出しにきた」



アリムの言葉に女は一瞬目を見開いた。



半分眠っていたのが、ようやくおきた感じだ。



「なにを言ってるの? できっこないわよ」



もう何年もここで働いてきたせいか、すべての希望を失っているような声。



「できるさ。俺はローズを2度助け出した」



「……なんですって?」



「あんたの娘だ」



そういうが早いか、いきなり女はアリムの胸倉を掴んできたのだ。



咄嗟のことでよけきれないアリムは見事に捕まった。



「なんで、そんな事を……!」



娘を助けたというのに、ギリッと歯を食いしばる女。



「なんで……って……」



「あの子のことは、私のお母さんが面倒見てたのに!!」



その言葉に、アリムの中で疑問が晴れて行った。



『私のお母さん』つまり、ローズにとってあの魔女は祖母にあたるわけだ。

そうか。



だからあの魔女はあんなにローズに固執していたのか。



それがわかると、自然と笑みがこぼれた。



「なにがおかしいのよ!? 塔から連れ出したら現実を知ることになるわ! 父親は娘を愛してはいない、傷つけるだけよ!」



胸倉を掴む手に更に力が入る。



けれど、アリムは冷静だった。



「あんたはどうなんだよ」



「え……?」



「あんたが、ローズを愛してやりゃいいんじゃねぇの? それに、あの魔女もかなりローズに入れ込んでるぜ? 俺も、俺の妹もローズのことが好きだ」



それでも、あんたはローズが不幸だというのか?



アリムの言葉に、女の手の力は一気に緩んでいった。



「でも、私いまさら会うなんて……」



「大丈夫、ローズはきっとあんたを許すよ。だって、ローズを守るためにやったことなんだろ?」

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