第34話
バンッと破られて開いた扉。
「ローズ!」
同時に呼ばれた名前。
その瞬間瞼の中のアリムは消え、かわりに目の前に待ち望んだその人が立っていた。
アリムの後ろには肩で呼吸を繰り返し、血に染まった農機具を持つ街人たち。
「アリム!!」
かけよろうとして、体が重たくて足が絡まった。
アリムはそれを抱きかかえ、そしてすぐにポケットから薬を取り出した。
「ほら、飲め」
「妹さんには……?」
「あいつはもう大丈夫だ。街のみんなにも、ちゃんと配った」
だから、ほら。
差し出す薬を受け取ろうとした手が、途中で力尽きてダランと垂れ下がった。
「おい、ローズ!?」
緊張が解けたのか気を失ってしまったのだ。
何度呼びかけても返事をしないローズ。
「仕方ねぇな……」
アリムは呟き、薬を自分の口に入れた。
2人の様子を見ていた街人たちは、察したように顔そむける。
「ぜってぇ、死ぬなよ」
そう囁き、ローズに口移しで薬を飲ませたのだった……。
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