第31話
☆☆☆
家を出て、目指すはもちろん城にいるローズの元。
屋敷の人間に薬をやれと声を張ったが、それが届いているようには到底思えなかった。
きっと、やつらはローズに薬を飲ませてはいない。
感染病だとわかっているのだから隔離されている可能性だってある。
そう思いながらホワイトの背中に乗ったとき、見たことのない老婆が声をかけてきた。
「そこの、男。どこへ行く?」
しゃがれた声に、真っ黒なマント。
それに三角帽子をかぶっている。
「宮殿だよ」
アリムは老婆の容姿に顔をしかめつつ、答えた。
「宮殿へ行って、どうする」
「ローズに薬を飲ませる。病気なんだ」
「宮殿には兵士がおるぞ」
「わかってるよ、そんなもん」
「魔女の塔のように、簡単に侵入できる建物でもないぞ」
「わかってるって……って、なんでそんな事知ってんだよ」
アリムの眉間のシワは更に深く刻まれる。
この、どう見ても《魔女です》といわんばかりの容姿の老婆が、本当に魔女だというのだろうか。
「ローズを誘拐した魔女って……もしかして、あんたか?」
「その質問に答える義理はない」
それだけ言って、老婆は足早に建物の影に身をかくした。
「おい、待てよ!」
そう言って追いかけるが……そこにはすでに老婆の姿はなく、黒猫が一匹にゃぁーと、鳴いただけだった。
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