第25話
翌日、アリムが熱が下がっていることに気づいたのは起きてすぐだった。
昨日はあれほど体が重たく、凍えるほど寒かったのに今はすっかり治ってしまっている。
「ローズ、大丈夫か?」
自分だけでなくローズも治ったのかと思っていた。
しかし、横でまだ苦しそうに汗をかく姿に、その期待はすぐに打ち消された。
「アリム……治ったの?」
うっすら目を開け、そう訊ねるローズに「あぁ、俺は平気だ」と、答える。
ローズは「よかった」と、弱弱しく微笑んだ。
「じゃぁ、早く行きましょう」
「おい、何考えてんだよ」
体を起こそうとするローズを、慌てて止めるアリム。
どう見たって、まだ動くことはできない。
熱は昨日よりも更に高くなっているようだし、上半身を起こすだけで呼吸が乱れている。
「あたしは、大丈夫よ」
「どこがだよ、寝てろって」
「でも……早く行かなきゃ妹さんが……」
そう言うとアリムはローズから視線を外し、無言になってしまった。
やっぱり。
もう間に合うかどうかギリギリなのだ。
「あたしなら大丈夫。国につけば、お父様が助けてくれる」
何年も助けに来なかった親など、信用はできない。
でも、今はそんなことを言ってここにとどまっている時間などなかった。
「本当に、大丈夫なんだろうな?」
嘘をつくなよ。
そんな目で、アリムが見つめてくる。
ローズはそれに微笑み、頷いた。
「大丈夫よ、絶対に」
保障なんて、どこにもない。
国王とローズの関係を知ったアリムにも、それはわかっていた。
「わかった」
でも今はその言葉を信じ、行動するしかなかった……。
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