第24話

☆☆☆


「くそっ! 今日中に国に帰る予定だったのに」



アリムはそう愚痴り、小さな洞窟の中膝をついた。



今から1時間ほど前、ローズとアリムはほぼ同時に咳きこみ始め高熱を発祥した。



そのため、今は近くの洞窟で一旦休息することになった。



洞窟は狭く、ホワイトが入るスペースがないので今回は外で待っている。



「無理しないで。横になって」



熱で赤くなった頬のローズが、アリムに言う。



「俺達まで感染してどうすんだよ……」



そう、咳きも高熱も、アリムの妹と全く同じ症状だったのだ。



ずっと看病していたアリムだから、感染したのだとすぐにわかった。



「マスク、つけてたのにね……」



「国を出るときには、マスクだけで予防ができてたんだ……きっと、ウイルスが進化してる」



2人して横になり、悔しそうに歯軋りをする。



どんどん悪化していき、食べ物も飲み物の受け付けなくなり、やがて衰弱していく。



そんな妹の様子を思い出す。



熱にうかされ、徐々に意識が遠のいていく瞬間「今、助けに行くから」と、アリムは呟いた。


☆☆☆


真夜中、ローズはそっと起き出してドレスのポケットに隠していた赤い薬を取り出した。



洞窟の気配を感じたのか、ホワイトが「キュゥ」と、小さく鳴いた。



「シィ」



ホワイトへ向けて、『静かに』と、人差し指を立てて見せる。



熱で額に噴出す汗をぬぐい、ローズはその薬をアリムの口の中へ入れた。



「ん……」



少し眉間にシワを寄せ、無意識にそれを飲み込むアリム。



「どうか、効きますように」



ローズはそう囁き、アリムの頬にキスをしたのだった。

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