第23話

国に近づくにつれ空気が悪くなってきたようで、2人は葉っぱをマスク代わりにして口元へ当てていた。



もちろん、ホワイトも大きな葉っぱを口元にあて、葉の両端に蔓を差込み、角に固定してマスクのように使っていた。



「ねぇ、ずっと気になってたこと聞いてもいい?」



「なんだよ?」



「どうして、竜に乗ってるの?」



街ではほとんどの人間が馬を使っている。



竜なんて、それこそ魔女の塔にでも行かなければ出会わないだろう。



「子供のころ、卵を拾ったんだ」



「卵?」



「あぁ。虹色の、両手でやっともてるくらいおおきなヤツだ」



言いながら、アリムは懐かしそうに目を細めた。



「見ればわかると思うけど、俺は家は貧乏でな。金になりそうなモンは、なんでも拾って帰った」



「それがホワイト?」



「あぁ。孵化させる気はなかったんだけど、拾った時すでに生まれる寸前だったみたいなんだ。で、持って帰って翌日にはホワイトが生まれた」



「親元へ帰そうとは思わなかったの?」



その問いに、アリムはおかしそうに声を上げて笑った。



「親って……ホワイトの親は竜だぜ? 竜に『ごめんなさい、子供さんを帰します』なんて言っても通じないだろ」



そうかもしれないけど……でも……。



こうして人間と分かり合えているホワイトを見ていると、それもできるんじゃないかと思えてくる。



「それに」



アリムは、ホワイトのウロコをゆっくりとなでた。



「もう、俺達は大切なパートナーだ」



竜と人間との隔たりを超えた言葉に、ローズはドキッとする。



この人なら、本当に自分の生き方を変えてくれるかもしれない。



そんな期待が膨らんでいく。



同時に、自分と一緒に生きることでアリムの人生を狂わせるかもしれないという不安が、胸をよぎった。



自分たちは、生きてきた世界が違いすぎる。



アリムは国王から褒美を貰い、そして自由に生きていったほうが幸せかもしれない。



自分と一緒に、過ごすよりも、ずっと……。

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