第13話

ホワイトの為に木陰を作った2人は、近くに洞窟を見つけてそこで小枝を拾っていた。



「どうして洞窟の中には枝が落ちてるの?」



「洞窟の中に巣を作る動物たちが、落としていくんだ」



湖で傷痕を洗い薬草をぬって、その上からローズのドレスの切れ端を巻いたアリムが答える。



「危ない動物?」



「いや、そこまで危険じゃないよ。夜行性で、火を焚いていれば近寄ってこないのがほとんどだ」



「そうなの」



ローズは、右手に小枝を抱きかかえながら、チラチラとアリムを盗み見る。



さっきからアリムの唇の感覚が蘇って、小指で自分の唇に触れた。



暖かな感触。



『俺は、案外お前の事好きかもな』



ぶっきらぼうな告白。



だけど、何年もの間塔に1人ぼっちだったローズには、心の中が暖かくなる言葉だった。



「ねぇ」



ローズは手を休め、アリムに近づいた。



「なんだよ」



少し妖艶なそのほほ笑みに、アリムも手を止めてローズを見た。



「あたしのこと好きって……本気?」



「……気になる?」



アリムはローズの腰に手を回し、クッとその体を引き寄せた。



それとほぼ同時に小枝を落とす2人。



木と岩がぶつかり合う音が響く中、2人は吸い寄せられるようにキスをしていた。



時々角度を変えて、むさぼるように互いを求める。



「俺、王子じゃねぇけど……」



「気にならないわ」



耳元でローズが囁くと、アリムの理性が遠くへと飛んでいく。



「俺は姫様には不似合いだ」



言いながらも、ローズのドレス捲り上げていく。



「わかってる。でも、止まらないんでしょ?」



初めてのはずなのに余裕のあるローズの態度に、アリムは一旦体を離してその目を見つめた。



アリムの言いたいことを理解したローズはクスッと笑い、「初めてよ。優しくして?」と、呟いた。



ドレスが乱れ、白いふとももがあらわになった時「そういえば、俺の事好きにならないんじゃなかった?」と、アリムが聞いた。



「いちいち細かいこと言わないで」



軽く膨れたローズはそう言い、アリムに身を任せたのだった。


☆☆☆


昼間集めた小枝がパチパチと音を立てて炎を燃やす。



2人の看病のおかげかホワイトの体調は随分回復し、自力で洞窟まで移動して火をつけてくれたのだ。



「この調子なら、明日にはまた動けそうだな」



「国には、いつ頃たどり着く予定なの?」



「あと……2日ってところかな」



「随分遠くなのね……」



言いながら、ローズは焼いた虹鳥の足にかぶりついた。



もう、虹鳥を食べないなんて言わない。



蛇でもネズミでも、なんでも口にしなければ生きていけないと、ようやく理解できたから。



「本物の王子様の馬じゃ、もっと時間がかかったろうな。迎えにいくのも、帰るもの」



「それって、王子様に嫉妬して言ってる?」



「別に?」



ひょいっと肩をすくめるアリムに、ローズは思わず笑った。



自分が王子でないことへの罪悪感が少なからず存在しているから、そんな事を言ったのだろうから。



「安心して? 今更本物の王子は来ないわ」



「じゃぁ、とりあえず姫を取られる心配はねぇわけだ?」



「そうね」



コクンとうなづくと、アリムの顔が近づいてきた。

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