第3話

姫に向けて暴言を吐いたあと、青年は竜から部屋へと飛び移った。



素足の青年の足にガラス片が突き刺さる。



それでも、青年は何食わぬ顔でローズに手を伸ばした。



その手も、先ほど窓を砕いたために出血している。



「来い」



「でも、あたし……」



「なんだよ。俺じゃ不満か?」



「不満……というか。お話の設定では、王子は兵士たちを倒して、それから――」



ローズの言葉を遮り、青年は大きなため息を吐き出した。



「んな悠長なこと言ってる場合じゃねぇんだよ、こっちは!!」



イラついたように怒鳴り、強引にローズの腕を掴む。



その華奢すぎる体は強引に引きずられて窓辺へと移動した。



竜が背中をピッタリと窓辺にくっつけてくる。



よく飼いならされた竜みたいだ。



「乗れ」



「あ、あたし竜になんか乗った事ない!」



「安心しろ、こいつは噛みついたりしない」



(そんなこと言われたって!)



もたついているとまた罵声を浴びせられそうなので、ローズは大人しく竜の背にまたがった。



見た目よりもゴツゴツした肌。



ウロコの1つ1つが手のひらサイズで、それに捕まれば大丈夫そうだった。



青年はローズの後ろに乗り、その背中の支えになった。



何年ぶりかに外へ出たローズは全身を包み込む風に一瞬身をすくめた。



蒸し暑いのに、寒いと感じたから。



「しっかり捕まってろよ」



「はい……」



か弱く返事をすると、竜はそれを合図にしたように猛スピードで空を泳ぎ始めたのだった。

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