第2話
窓の下から上へと現れた青年に、目を丸くする。
青年は茶色く汚れたボロ切れを身にまとい、無精ひげを生やしていた。
竜の方は真っ白で、微かな日の光で体がキラキラと輝いてみえた。
「これは……どういうこと?」
唖然としていると、青年が「ここを開けろ!」と、窓を指さして叫んだ。
ローズは左右に首を振り、「ダメよ。魔女に禁止されてる!」と、叫び返す。
窓ガラスが少し分厚いため、叫ばないと届かないのだ。
「お前を助けに来た! 開けろ!!」
再度怒鳴る青年に、ローズは心が震えた。
(あたしを……助けにきた?)
何年も何年も待ち続けてきた。
その日が、ついに訪れたのだ。
すぐに駆け寄って窓を開けたい衝動を抑え、ローズは再び窓に近づく。
「本当に、あたしを助けにきたの?」
「あぁ、そうだ」
(でも……彼の服、ボロボロだわ)
ローズは青年の貧相なその容姿が気がかりだった。
夢見ていた王子様は、もっと綺麗な顔をして無精ひげなんかも生やしていない。
少年は、そこから大きくかけ離れていたから。
「あなた、兵士たちを倒したの?」
「いいや」
「竜の首にかかっている鍵は?」
「知らねーよ、そんなもん」
素っ気ない返事に、ローズは脱力する。
「それじゃダメよ。お話が違うから」
せっかく、ずっと待っていた王子様が来てくれたと思ったのに、期待は一瞬にしてしぼんでいく。
少年は竜を使って、設定無視でここまで辿りついただけだった。
それは助けにきたとは言えない。
ローズの考えはそうだった。
しかし……。
青年に背を向けた瞬間、派手にガラスが割れる音が部屋中に響いた。
驚き、身を縮めるローズ。
そっと振り返るとさっきの窓ガラスが割られ、その向こうから青年がこちらを睨み付けていた。
「なんてことするの!?」
「うるせぇ! てめぇに聞き分けがねぇからだ!」
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