【論考】熱中症リスク格差は必ず起きる。

 珍しくタイトルから書いている。


 前の記事を書いておいて、前の記事に自分が書いたにもかかわらず「これって書いておくべきことなんじゃないのか」と思うことがたまに起こるのだ。それが今回の記事に繋がっている。


 国・地方・仕事・年齢etc...において「熱中症リスク格差」は必ず起きるというか、もう起きている。誰も問題にしないだけだ。よく猛暑日のNHKニュース7の最後の挨拶などでは「熱中症対策にはくれぐれもご注意ください」と言われるが、外で作業着を着て毎日仕事をしなければいけない人が、いくらナトリウム飲料水を飲んだところで、暑さはとどまるところを知らずに襲い続ける。室内で空調の効いた部屋で、クールビズとのたまいながら軽装でパソコンに向かって作業をしている人と、飲料水への経費の分だけでも、充分に格差が起きていると言ってもいい。日本国内においてでも、例えば小学生で、学校に空調機能が整っている学校もあれば、昔のままで空調など教室に置かれていない小学校だってあるだろう。私も小学校・中学校と空調のない教室で過ごしてきたが勉強どころではない。頭の中は「暑い」の一言で埋め尽くされ、すたたれ落ちる汗などは、シャープペンシルで書いたルーズリーフを淡くにじませる。職員室はあんなに空調が効いていたのに。中学にもなるとこのおかしさに気付き、みな男女問わずタオルを首に巻いて、保冷剤を持ってきて、休み時間になると首や足首にタオルに巻き付けて冷やしていく。勉強どころではないのだ。ここでも「熱中症リスク格差」が起因となる「教育格差」の問題にも発展していく。


 「危険な暑さ」というのがちまたでは定着しつつある。しかし、土木事業を行う人や野外に出て働かなければいけない人などは、「自分で予防してください」としか言われない。働かなければいけないのだ。「危険な暑さ」で働く人は「戦場で働く兵士」と言ってもいい。熱中症で死ぬリスクは本当にあるのだ。


 先ほども書いたが、ナトリウム飲料水などを大量に服用しなければならない人は必ず出てくる。しかし、事業別に「熱中症リスクが高い」と認められる人に補助金が出るなどという話は毛頭出てこない。法律や政策を創る人が「危険な暑さ」への我慢や忍耐の経験をほとんどしてきていないからだ。こうやって国内だけでも「熱中症リスク格差」は広がっているし、今後はますます広がっていくだろう。


 「地球温暖化を止めよう」というのは私たちが子供の頃に流行った言葉で、今ではもう無理なのだ。地球温暖化を受け入れたうえでの政策・対策が必要なのだが、誰も問題にしない。「暑い」のは誰でも分かっているが「暑い中でも仕事を続ける・作業を続ける」必要のある人は、特に田舎ではごまんといることを忘れてはいけない。


 日本はまだ恵まれた方かもしれない。2022年6月。インドでは50度に達したという。熱中症患者は何人いるかは分からない。死者の数も分からない。しかし、その暑さの中でもレンガでできた粗末な家に暮らす人は何億といることだろう。中国では豪雨が起きた。もう「地球温暖化を止めよう」「環境破壊をやめよう(これは人間にとって都合のいい環境を破壊するのをやめよう、と言っているようにも思えるが)」と言っているレベルではなく、「温暖化した地球に暮らすうえで、地球と共存していく方法を考えよう」という時代にもう達しているのだ。そのために、日本でできることは、まず「熱中症リスク格差をなくそう」という動きを始めることからだと考える。


 政策を創る人は、自分達が涼しい格好でいられるだけでなく、涼しい格好でいられない人たちのことを考えた政策を考えてほしい。

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