血のような恋に恋した

恋してる人に恋したことはあるか。

知ってるか、恋をすると人間は綺麗になる

僕も恋をしてる人に恋をした。



_____君が先生に向けるその、

眼差しが好きだった。

真剣で、どこか儚くて、綺麗だった。

いつも、誰にでも優しく接していて、

明るかった。

けれど、あの先生に恋をした日から、

彼女は変わった。どこかよそよそしくなり、

髪もショートからロングに。

教室で何度も過呼吸を起こしたり、

手に傷が増えたり。


彼女は恋をした相手に

構って欲しいのだろうか、

僕ならそのままの君でも構うのに。

昼間の月が綺麗だと、

何度でも言ってやれるのに。


他の女の子に惚れられた所で、

何にもなりやしねぇ、俺の好きな人は唯1人、

彼女だけなんだから。

いつか君は必ず失恋する筈だろう。

その日を虎視眈々と待つ俺は鬣犬だろうか、否。


ただ恋する人間だ。


恋は人を変わらせる、そうだろう?

君があの男に灰かぶり姫に

されてしまったのなら、

僕は君にガラスの靴を履かせてあげよう。

嬉しそうな君の顔がよく浮かぶよ。


「年上なんて何にも良いことは無いぜ」

ほら、目の前の僕を見てご覧よ、この僕を。

「私この恋はきっと叶うと思っているのよ」

嗚呼、また君は何処か遠くを見透す。

君は薔薇のように美しく、気高く、そして、

茨で要らない人間を遠ざける。


僕は君の為になら、なんだってなれるのに。

なってやったって構わねぇのに。

その茨に軽い口付けでもして呪いを

解いてやれるのにダメなのかい。

僕じゃ、ダメなのかい。

僕なら、君の胎内から出たモノなら、

いくらでもあやしてやれるのに。

抱いてやるのに。

一思いに嗤いながら存分にじゅるりと、

喰らってやれるのに。

欲しいんだ唯の赤子じゃ駄目なんだ

君から出た赤子がいいんだ

君との繋がりが欲しいんだ。

例え父親が母子の付属品であろうと、

欲しいんだ。ダメなのかい、

僕じゃダメなのかい


僕はあの先生の何処に負けてしまっているんだ

「先生の魅力は貴方にはわからないかしら」

僕にはとんと、

アイツの魅力な所が検討もつかなかった


君はスーツ姿のアイツを見て頬を染め

机に打ち拉がれる君をそんな姿にさせるのは、

僕でないといけないのに。

否、僕以外の筈は無かったのに。

僕はとてもモテるんだよ。

副生徒会長の女やら、学級委員長やら、

なんやら。

なのに、こっちを見てくれやしない。

嫉妬心はボウャボウャと燃え続ける。


惚れたのはあの日、授業の日。

真剣に民衆に語りかけ、熱意を伝えた君。

そんな君に惚れちまったのさ。


1度目の告白はダメであった。


君は怒りで顔を真っ赤にして、僕に捲し立てた「そんな不純な気持ちで穢さないで」

穢したのはどちらだろうか。

わからないことだらけの恋は

愛になる気配は無い。

愛おしげに眺める愛、

それはただの観賞用に過ぎないのであった


変と恋はよく似てる気がしないか。

変の成り立ちに誓いの糸を引き合う、

というものがある

僕が誓いの糸を垂らして、君が引く。

そして君と僕が手を取り合い、

微笑み合い、笑いあう。


そんな愛の形が、僕達の理想形だとは君は思いやしないのかい。


なあ。


君と繋がりたかった。


繋がることで、

君の心を手に入れようとしたのかもしれない

だが、繋がることすら叶わなかった。

君の柔い肌、黒い髪、何もかも、

手に入りやしなかった


その前にその涙を見てしまった


気づいた、恋をしてる君が好きだった

だが自分に向く恋には気づかなかった。

そんな、愚か者であった。


「俺は恋に恋をしちまったバカ野郎だ。」

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血のような赤い恋をした 無機千代子 @dobukorosu

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