権力

 3人には、ギルド長を回復のために眠らせようとした妖精の手違いで全員を眠らせてしまったことを説明する。ちょっとした妖精の手違いということで納得してもらう。もちろんチズコの根っこが鼻の穴にインした話はしない。


「ギルド長はどれほど眠れば治るのか?」

「さぁ? とりあえず一日?」


 イーサンが不安な顔をするので不思議水をギルド長に撒く。


「カエデ、ギルド長に水やりしてるみたい」


 ミロがボソッと言う。


「カエデ~もっといっぱい水がいるだえ~」


 うん。そうだね、ギンちゃん。回復にはもっと不思議水いる。もういっそギルド長を水に浸けられるなら楽――そうだ、水に浸ければいいじゃん。


(チズコ、シャボン玉でギルド長を包んで)


 チズコのシャボン玉がギルド長を包む。うんうん。シャボン玉の中に不思議水を入れ、ギルド長を少し浸す。不思議水は水深5センチくらい。これくらいあれば十分。だよね? ジャーンと効果音をつけてイーサンと双子にシャボン玉を見せる。


「看護カプセル完成。見て、この安らかなギルド長を」

「「カエデ、凄い!」」

「お前な、やってること無茶苦茶だぞ!」


 仕方ないじゃん! これしか方法ないんだし。


「それより、シーラをさっさと救出に行こう」

「お前、この人はどうすんだよ」


 イーサンがギルド長の妻を指差しながら言う。


「あー、忘れてた」


 チズコの鼻の穴突っ込みでギルド長の妻を起こし、看護カプセルの見張りをお願いする。完治する可能性が高いと言えば、困惑しながらも了承してくれた。


   ◇◇◇


「で、領主邸に忍び込む方法ってあんの?」

「ないことはないが、見つかる可能性が高い上に逃げても反逆罪で追われることになるぞ」

「他に方法はありそう?」

「領主邸に一番ロータスを届ける時を狙って地下に行ければいいが、情報屋の話だと以前より警備が増加したらしいからな。どうにかもう一度理由をつけて地下に行ければ――」


 ニヤっと口角を上げる。いやいや領主邸の地下にご招待される方法ちゃん他にもあんじゃん。野営中にテントの中で考えていたことを思い出す


「ねぇ、領主に捕らえられたらどこに収容されるん?」

「それは領主邸の地下牢――おい! 何を考えてやがる!」

「領主邸の地下への入り方だけど?」

「お前……罪人への扱いを知らないだろ。拷問や女なら――いや、カエデは大丈夫か」

「なんで今、胸を見て言ったん?」


 今、イーサンは明らかに私の胸を見ながらカエデなら大丈夫だと言った! ねぇ、なんで?


「とにかく、ダメだ。そんなことで捕らわれたら平民の命なんて軽く終わらされる」

「貴族には逆らうなって村でも言われていた」


 ミラがそう言うとミロもやめてほしそうな顔で私を見つめる。でも、大丈夫なんだって。


「それが、そんなことないんだよね。ほら、見て見て。権力」


 満面の笑みでギンちゃんから受け取ったオスカーの書状をイーサンと双子に見せる。この書状はオスカーにもらったもので、あれば大抵の貴族を黙らせられるアイテム。3人とも、しっかり見て。これが権力だし。

 イーサンが書状を見て止まる。


「は?」

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