ライジング双子と疑問

 空に飛ばされるのはカエデちゃんも嫌なんだけど。

 イーサンが空のお散歩を拒否すると双子が手を上げる。


「「やりたい!」」


 イーサンは最初反対したが、双子の切望に押され承諾する。

 肩にいるミニチズコに小声でお願いする。


「チズコ、双子が絶対に落ちないようにしてね」

「問題ないわ。頑丈なのを出すから私の本体を出してくれないかしら」


 ミニチズコの力だと途中で割れる可能性が高いと聞いたことはイーサンには絶対言えない。というか、そんな話は先にしてくれないと困るんだけど。

 一斗缶のチズコがワサワサと動くと二重囲いになった大型のシャボン玉が双子の周りに生成され、フワっと浮かぶ。


「わぁー」

「僕たち浮かんでるよ!」


 興奮する二人を横目にユキに耳打ちをする。


「ユキ、安全第一だからね」

「ヴュー」


 分かっているわよ、とでも言うようにユキが返事をする。本当、頼むから。

 オハギの黒煙の紐が巻き付いた双子が入っているシャボン玉が上昇すると、ユキに跨り出発した。イーサンはうどんに乗りながら、途中、何度も振り向きシャボン玉を確認した。私も双眼鏡で双子を何度か確認したけど、2人とにかくずっとはしゃいでいた。元気なのはいいけど、シャボン玉の中で飛び跳ねるのは怖いからやめて!

 ユキはヒャホーせずに軽い駆け足で走ったので行きよりも時間がかかったが、ガーザの街の近くまで到着した。私の時と違い過ぎて……ユキちゃん、私の扱い酷くね?

 人に見られる前に双子を回収。あー、なんか凧揚げジャンこれ……。

 地面に到着してシャボン玉が割れると二人が声を合わせて満面の笑みで言う。


「「楽しかった~」」


 私とイーサンとは違う経験で良かったけど、なんか複雑。私も普通にフライングカエデしたかったんだけど。


 ガーザの街の検問の列に並びながらイーサンに尋ねる。


「何時にギルドに一番ロータス渡しに行かないといけないん?」

「特に時間指定はないが、届け先は領主邸だ」


 宅配って……イーサン、よく2週間も我慢しているじゃん。


「本当のギルド長ってどこにいんの?」

「自分の家で療養中だが……なんでだ?」

「確認したいから」

「何を確認――ああ、そうか。カエデのポーションなら治せるのか?」


 イーサンが不思議水で治った以前は麻痺していた腕をさすりながら尋ねる。


「ん。治るか知らないけど」


 原因は何か知らないけど……死んでない限り不思議水で治せるんじゃ? たぶん。ギルド長が復活すれば代理は要らないわけだし、リスのおっさんを代理から引きずり下ろせそう。


「ギルド長の家に案内する」

「一番ロータスは大丈夫なん?」

「今はそれよりもギルド長が優先だ。渡すのはその後に向かう」


 イーサンと双子と共に本当のギルド長の家へ向かう。途中、ずっと疑問だったことをイーサンに尋ねる。


「ギルド長の不在の間って、普通副ギルド長が代理するんじゃないん? 領主の息子じゃなく」

「ああ、ガーザの副ギルド長は俺らがこの町で活動し始めてすぐに引退してまだ変わりが決まってないからな」

「え?」


 えぇぇ。じゃあ、あの副ギルド長って名乗った宿を尋ねた男は誰なん?




**

2024年ですね。

明けましておめでとうございます。

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