怪しい訪問

 カエル肉、食べすぎたし……


 腹いっぱいでゴロゴロする。昼寝でもしようかと思ったらドンドンとドアが叩かれた。誰?

 不機嫌にドアを開けると知らない男が立っていた。見たこともないどこにでもいるような顔と格好。年は30代前半くらい? 敵意は感じない。


「誰?」

「ああ、済まない。銀級の冒険者、黒煙のカエデで間違いないか」

「違います」


 ドアを閉めると、すぐにドンドンとまたドアを叩かれたので5センチほど開けて尋ねる。


「何?」

「黒煙のカエデであろう?」

「だから違うって」

「フェンリルの従魔といたのを見たぞ」


 見た? 何、いつから見ていたん?


「先に名乗るのが筋じゃね?」

「ああ、済まない。私はガーザの冒険者ギルド副ギルド長のネルソンと言う」

「フーン。その副ギルド長がなんの用?」

「その、立ち話もなんだから部屋に入れてくれないか?」

「やだ」

「なっ。いや、そう言わずに少し話がしたい」


 ネルソンがドアに手を掛けるとギンのビリビリ攻撃を受ける。驚きながらドアから手を離すネルソンを睨む。こいつ悪意あんじゃん。ギンちゃんのビリビリはマルゲリータやガークにも効いていたから一概には言えないけど……ガーザに着いて3時間くらいしか経っていないのに冒険者ギルドのナンバー2が会いに来るとかトラブルしかないじゃん。


「今のピリッとしたのは、攻撃をしたのか?」

「静電気じゃね?」

「……尋ねたいことがあるのだ。少し話をするだけでいい」


 質問に答えればどこかに行くん? オスカーに貰った書状を使ってもいいんだけど、大事になりそうだし……あれの抑制力は主に貴族って話じゃん?

 チッと心の中で舌打ちをする。面倒だけど質問を聞くことにする。


「じゃあ、どうぞ」

「は?」

「尋ねたいことをどうぞ」

「ここでは人に聞かれてしまう」


 コイツ頑なに中に入ろうとするのはなんで? 足元からネルソンを見上げたオハギが言う。


「燃やす?」

「ダメだって」


 声を上げ言えば、ネルソンが驚いた顔をする。咳払いをしてネルソンに伝える。


「中に入るのはナシで。必要なら冒険者ギルドへ向かうけど、依頼の類とかだった断るから」

「そうか、分かった。うむ、今回は引くとする」


 そう言いながら去ったネルソンの足音は全くしなかった。

 怪しさ全開じゃん。


◇◇◇


 朝、目を開けると広い部屋だった。そうだった。6人部屋を借りていたんだった。

 昨日はあの怪しい訪問の後にそのまま昼寝、起きたときにはすでに外は暗かったのでそのまま二度寝をした。おかげで今日は凄く調子がいい。良く寝たのもあるけどもしかしてカエル肉のおかげ? あれ、パワーフードなん?


「ギンちゃん、起きよっか」


 ベッドで背伸びをしてギンのいる窓辺に寝返りをすると、チズコがドアップで目の前にいた。


「あら、おはよぉん」

「ぎゃああああ」

「人の顔を見るなり叫ぶなんて失礼ね~」


 朝から濁声のピンクのヤングコーンのドアップとかきついって!


「カエデ~おはようだえ~」

「ギンちゃん、今日もかわいい……ん? 何それ?」


 ギンの隣にはシャボン玉のような丸いものが飛んでいた。







 

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